第122話――禁断の遺物


 全員がそちらを見ると、白の黄ばみかけた防護服ぼうごふくを着た人物が此方こちらに向かって歩いてきた。


 オレンジ色の隊員達は警戒し、一斉に銃を向けた。

 男は四角い防護フードを被ったままだ。


 遠方でその光景を見ていた九十九つくもが、折り畳み式の双眼鏡を覗き込んだ。

 彼は思わず声をらした。


由良ゆら……? あいつ……! 何やってんだ!?」


 彼は高倉たかくらと共に木々の間を潜りながら、見つからないように、そちらに近づいた。


「違うんだ! これは、!」


 由良は両手を上げながら、半田に近づいてきた。

 半田は目を細めながら、ようやく相手を確認すると言った。


「ゆ……由良ゆらさん……? なっ……何を言い出すんだ?」


 突然水を差されたように、彼は顔を引きらせた。

 すると、


「……何故、そう思うんです?」


 横から弓削ゆげが銃を構えた部下を手で制しながら、興味深そうに聞いてきた。

 由良は弓削の方を向くと言った。


「彼女を、からだ」


 弓削はいぶかしげに目を細めた。

 傍にいた半田が、しゃくに触るような表情で聞き返した。


「……何だと?」


 由良はさらに声を張り上げて、その場にいる全員に向かって言った。


「今すぐ山を下りるんだ! あなた達は、を掘り起こそうとしている! が目覚めたら、もう手遅れだ! !」


 突然、計測装置からが鳴り、安田やすだ社長がディスプレイに顔を向けた。


 今までで、一番強い反応だ。


「どうしたんです?」


 弓削が問いかけた。


「いや……今、一瞬……そんなバカな。ひつぎの辺りに、急激な熱変化が起きたような……」


 社長が狼狽うろたえた声で言った。


「……何?」


 弓削が問い返した、その次の瞬間だった。


「今すぐ手をあげろ! 君達は全員包囲されている!」

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