第100話――追跡

「本部へ! 発砲事件発生! 捜査官一人が拉致された! 至急応援を! トラックのナンバーは、港区『21○○  い○』! 白の二トントラック――」


 無線で応援を呼ぶと、郷田ごうだ刑事は慌てて車のエンジンをかけ、サイレンを車の上に載せて追跡した。


 早朝のまばらに空いた国道を百十二十キロ以上のスピードで、そのトラックは駆け抜けていく。

 郷田は必死でアクセルを踏み込んだ。


「今国道○○号線を走行中!」


 頭から湧いてくるいろんな不安をかき消すかのように無線に向かって叫び声を上げた。

 気が付けば、車一台も通らないような海沿いを走っていた。


 すると、そのトラックの助手席から作業帽子をかぶった男が顔を出した。

 と、同時に銃口をこちらに向けた。


 郷田は咄嗟にハンドルを右に切った。

 次の瞬間、発砲音が聞こえた。


 弾はフロントガラスに当たり、助手席を貫通した。

 目の前に蜘蛛の巣のようなヒビが入り、郷田の視界が悪くなった。


 間髪入れず、トラックの運転席から別の男が顔を出し、此方こちらに向けて発砲した。


 弾は右前のタイヤに当たった。


「……!」


 車はバランスを崩して傾き、激しく横転すると、逆車線上を転がりながらすべっていき、向こう側のがけにぶつかって止まった。


 トラックは、そのまま猛スピードで走り去って行った。

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