第79話――島との繋がり


『ミナカメディカルワーク』


 高倉たかくらは、そのキーワードで何度も検索を重ねた。

 しかし、そんな製薬会社はどこにも見当たらなかった。

 

 彼女は刑事部のドアを開け、廊下に出た。

 周囲を気にしながら携帯のアドレスから、ある番号を呼び出し、通話ボタンを押した。

 

『俺にかけるな。お前まで謹慎きんしん食らうぞ』


 受話器の向こうで、九十九つくもが言った。

 高倉は気に留めず、問いかけた。

 

「『ミナカメディカルワーク』の名で検索したのですが、そんな会社は存在しません。他に夫人は何と?」


『刑事を脅迫するような奴らだ。偽名を使っているんだろう。奴らはを欲しがっていた。被害者達が御子島みこしまから持ち帰った石だ。島と奴らは、きっとつながりがあるはずだ」


 彼が話している背後で、汽笛の音が聞こえた。

 

『九十九さん? 今……どちらに?』


 高倉の表情が強張った。


『気にするな。ちょっと休暇を取りに行くだけだ』


「ま……まさか、また御子島みこしまに?」


 高倉は思わず口を押さえ、周囲を見渡し、

 

「今度何かあったら、部長に怒られるどころじゃ済まないですよ……」


 押し殺した声で言った。

 

『大丈夫だ。お前は自分の仕事に集中しろ。松村まつむらに関する情報があれば……』


 彼は思わず口にした言葉を呑み込んだ。

 

『いや……もう掛けてくるな。謹慎きんしんが解けるまでは、俺と連絡を取らない方がいい。とにかく松村を探し出すんだ』


「わ……わかりました」


 高倉が戸惑いながら返事をすると、

 

『あぁ、それと』


 付け足すように、九十九つくもは言った。

 

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