第66話――暴行の相手
刑事達の車は、
彼女は
『暴走しないよう、あいつを見張っておけ』
確かに今回の欠勤といい、由良との距離感といい、
高倉はさりげなく九十九の表情を観察しながら、シートベルトを外した。
九十九はドアを開け、二人はそれに続いた。
「おい……。どうした? 大丈夫か?」
九十九が気遣うと、
「いえ……
由良は傍にあったアパートの階段に腰をかけた。
高倉も心配し介抱しようとしたが、由良が手の平をこちらに向けて制止した。
「お構いなく」
そう言われ、気掛かりながらも、そのまま九十九についていった。
九十九が、一〇四号室のドアをノックした。
「はい」
すぐに返事が返ってきて、ドアが開いた。
玄関には、髪を後ろに無造作に束ねたグレーの上下スウェット姿の若い女性が立っていた。
顔は丸顔で幼く見えたが、青白く、どこか具合が悪そうだった。
「警視庁の
手帳を見せて尋ねると、
「はい……そうですが」
彼女の声は
「退院早々すいません。
「……ええ」
彩乃は
「彼女とはアルバイト先でお知り合いに?」
少し
「……はい。旅行が好きで、そういう話題で仲良くなって」
「最近では、
彩乃は少し驚いたような表情を見せると、また視線を落として言った。
「ええ、山下さんから誘いを受けて」
その反応を観察しながらも、九十九はストレートな質問を投げかけた。
「
目を大きく開けたまま刑事二人を交互に見つめ返すと、眉間に
「……岡さん? 大丈夫ですか?」
九十九が呼びかけた。
「え……ええ」
彩乃は
「……確かに行きました。私は止めたんですが、
九十九は質問を続けた。
「五十七年前に、事件があった事を知っておられたんですね?」
上目遣いで彩乃は
「……ええ、そうです。ちょっとした
話の続きを待った。
長い
「……それで?」
「それで終わりです」
「……終わり?」
少し
「何か……大きな岩を見たとか?」
彼女は視線を落としたままだ。
「いえ、何も」
諦めきれない様に、九十九は別の問いを投げかけた。
「何か変わったものは? 広場みたいな場所があったとか?」
後方にいた高倉が少し心配そうな表情で九十九の背中を見た。
「……広場? ……一体、何の話です?」
彩乃が眉を
「なぜ、
背後にいた高倉が強引に話題を変えるように、少し明るめの口調で問い掛けた。
九十九が一瞬だけ振り返り、高倉と目を合わしたが、またすぐに前に向き直った。
「……あ」
突然、
「……岡さん?」
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