第64話――検屍結果


 府中署の方から検屍けんし結果が届いたのは、翌々日のことだった。


死因しいんは、頸部けいぶへの圧迫あっぱくによる窒息死ちっそくしわずかに抵抗した跡はあります。ただ爪などからは、他人の皮膚のようなものは発見されなかったところを見ると背後からか。事件現場へ行くまでは、一切抵抗していなかった可能性が」


 検屍に立ち会った解剖医の田坂たさかが言った。

 二つの管轄が交錯する可能性があり、解剖の必要性を確かめるためだった。

 

「顔見知りか」


 九十九つくもはその渡された書面を見ながらつぶやいた。

 

「生前に山下正美やましたまさみに殴られた箇所は、どこだ?」


 問いかけると、田坂は首を横に振った。

 

「……それなんですが、殴られたような形跡は、体のどの部分にも見当たりませんでした」


「どこにも? ……じゃあ……」


 九十九が言葉に詰まると、田坂は言った。

 

「ええ。山下正美が殴ったとされる相手は、

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