第59話――制止


 とともに、由良ゆらは思わず後方に身をけ反らせた。

 

 ハッと顔を上げると、黒い苔のついた岩々が目に飛び込んできた。

 周囲を見渡すと、九十九つくも半田はんだが目を見開いたままこちらを見つめていた。

 

 我に返った由良は、両手で胸のあたりをさすった。

 

「何か見えたのか?」


 九十九が問い掛けた。


「……ええ」

 

 由良は磐座いわくらを見つめたまま返事をした。

 

「……見えるって、一体、何が?」


 その様子をはたから見ていた半田が、少し戸惑った様子で訊き返した。

 初めて由良のの当たりにし、驚いている様子だ。


 由良は尚も二人に背を向けたまま言った。


を受け取りました」


「……どんな?」


 九十九が顔を強張らせながら問い返すと、由良はようやくゆっくりと振り返って言った。


 「『』と」

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