第56話――辿り着いたら

 

 半田はんだは岩を眺めながら、しみじみと答えた。

 

「おそらく、古代の人々が神々と交信するために設置したかと」


「設置って……。こんなでかい岩を、一体どうやって山のてっぺんに?」


 九十九つくもは尚も驚きが収まらない様子だ。

 

「それが謎なんです。こういうものが日本の至る山々で、たくさん見つかっています」


 その巨大な磐座いわくらのちょうど両脇から下を見下ろせた。

 

 ふもとには樹海が広がっていた。

 その周囲を他の山々が取り囲んでいる。


 樹海の中央に、綺麗なが見えた。

 

 それまで無口だった由良ゆらが、突然、口を開いた。

 

「……あの山は?」


 好奇心で満ち溢れていた半田の表情が、突然、強張ったのがわかった。

 

「ああ……あれは『仏獄ぶつごく』と呼ばれている山で」


「……仏獄?」


 九十九がいぶかし気にき返した。


「……ええ。……島の人達は近寄りません」


 刑事と探偵が顔を見合わせた。

 九十九は半田に向き直り、再び問い返した。


「……なぜ?」


 半田は少し顔を引きらせながら言った。


「『辿』という言い伝えがあって……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る