第55話――到達


 神社を十時前に出発し、頂上に着いたのは、十二時過ぎだった。

 想像以上にきつい行程こうていだった。

 

 枯れ木や落ち葉が積もるを登り、しかも土が雨で湿っていたため、ステッキなしでは、おそらく途中で崩り落ちていただろうと思えるくらい地面が緩かった。

 頂上へ近づけば近づくほど勾配こうばいがきつくなり、さすがの九十九つくもも息が上がるくらいだった。


 彼が驚いたのは、華奢きゃしゃ由良ゆらがその見た目とは裏腹に、軽やかな足取りで先へ先へと登っていく姿だった。

 

「あいつ、一体何者なんだ……」――



「頂上です」


 先頭を歩いていた半田はんだが、振り返って大きな声で呼び掛けた。


 背の高さ程の枯草が生い茂り、前方は見えづらかった。

 まだ残暑のごとく照りつける日射しが降り注いでいた。

 

「あそこに見えるのが、そうです」


 半田が指を差した三十メートル先ぐらいに、が背丈ほどの枯草の中から天に向かって突き出ているのが見えた。


(何だ……あれは?)

 

 離れた場所から見ても、その光景は異様だ。


 三人は草をかき分けて、そちらに足を進めた。

 途中で何かにぶつかりそうになった。

 

 草に隠れていただった。

 高さ二メートルほどか。

 それは数メートルほどの距離をおいて、所々にあった。

 三人は、それらの岩々の合間をくぐり抜けるように進んで行った。

 

 ようやく目的地点に辿り着いた。

 

 二人は茫然としたままだ。

 一見、どこにでもありそうな何の変哲もない山だ。

 頂上は雑草だらけ。

 

 なのに、まるで、そこに誰かが

  

「これが例の写真の磐座いわくらです」


 明らかに、それは自然発生的にできたものではなかった。

 合わさった岩と岩の間に、ぴったりとはが明らかに見て取れた。

 苔で茶黒くなったそれらを数えると、はありそうだ。


 人の身長を越える大岩が縦向けに、時折、横向けに積み合わさり、絶妙なバランスで支え合っている。

 

 まるで、


 九十九の頭の中で、矢継ぎ早に疑問が湧き出てきた。

 

「……これらは、一体なんです?」

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