第33話――同化
彼女らは、『
そして、そのツアーが前回実施された場所は、『
「何かわかったか?」
電話の向こうの彼女は言った。
『
「事件の後に消えるなんて……。そいつは何かを知ってる。引き続き、奴を追ってくれ」
九十九は電話を切ると、松村がよく出入りしていたと思われる店などの聞き込みをするため車を降りて繁華街に向かった。
ふと、左前方にある八階建てくらいのビルを見上げた。
何かが目に入った。
屋上に人が立っていた。
遠目ながら長い髪が風でなびいているのが見え、女性だとわかった。
(何をしている? ……!)
気づいた時には、遅かった。
次の瞬間、女性の体が宙を舞った。
彼は咄嗟に走り出した。
しかし、そこまでは距離があった。
鈍い音を立てて、女性の体は地面に落下した。
「そ……そんな……」
九十九は呆然とその体を見下ろした。
うつ伏せになりながら女性は横を向いていた。
目を見開いたまま。
地面が、徐々に赤色に染め上げられていく。
九十九は震えながら、手を伸ばそうとした。
その瞬間だった。
その瞳が動き、こちらを向いた。
目が合うと、女性は震えながら言った。
「助けて……」
……!
その瞬間、胸が押し潰されるような感覚になった。
見ると、女性は消えていた。
思わず
屋上には何も見えない。
頭を下げて、辺りを見渡した。
何事もなかったかのように通行人が行き交っていて、時折、九十九の方を
もう一度、女性が倒れていた場所を見つめ返した。
その場に縛りつけられたように、彼はしばらく動くことができなかった。
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