第32話――裏切り


「あいつは、俺たちをあざむいていたんだ!」


 松村まつむらのデスクに両手を叩きつけながら、九十九つくもは叫び散らした。


「……彼女達の死に、あいつも関わってる……」


 胸の内から、急に松村に対して憎悪の気持ちが湧き起こってきた。


 傍にいた高倉たかくら刑事も信じることができずにいた。

 あまりに衝撃的な事実に言葉を返すことができない。

 

 すると、周りにいた他のわかい刑事が必死に松村をかばうように言った。

 

「……まさか……松村さんがそんな事するわけが! きっと、何が事情があるはずです!」

 

 九十九はその言葉をけるように、怒声を張り上げた。

 

「じゃあ、なぜ俺に黙ってた! この三年間ずっとあいつと組んできたんだぞ! なのに、……なのに、俺は全く気付かなかった!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る