第23話――旧い友人
午後七時過ぎ。
辺りはすっかり日も落ちて暗くなった中、
「ただいま」
ガラガラっという音を立てて和式の引き戸を開けた。
「……え?
奥から声が聞こえてくると、
「どうしたの? 珍しい」
肌色のカーディガンを
顔は
「たまたま仕事の用事で、こっちに来たからついでに」
彼は笑みを浮かべながら言うと、玄関に腰を下ろし黒い革靴を脱ぎ始めた。
白髪交じりで四角ばった顔つきの男性の写真があった。
泰章は、その隣に置かれてある写真に目を遣った。
男の子の写真だ。
半ズボンに青のTシャツを着ており、あどけない笑顔を向けている。
キャンプに行った時の写真なのだろうか。
背景には木々が生い茂り、テントも写っていた。
泰章は気が付くと、その写真に自分の幼い頃の面影を探していた。
「母さん」
彼は仏壇にしばらく手を合わせた後、口を開いた。
「何?」
傍に座っていた母が顔を上げて訊き返した。
「兄さんが映っている写真って、他にもまだ残してある?」
突然、あらたまるように母の方に向き直って聞いた。
「ええ、もちろん。……どうしたの? 急に」
母は少し戸惑ったように聞き返した。
「いや……今なら少しは思い出せるかなと、ふと思っただけ」
泰章は場を和ませるように笑いを交えながら言った。
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