第20話――残された手がかり

 

 警察署に戻った二人は、もう一度二つの事件の関連性を調べるため、西野裕子にしのゆうこの遺体が発見された現場写真を見直した。


「おい……」


 九十九つくも松村まつむらにその写真を見せた。


 トイレの洗面台を写したものだ。

 

「……これは何だ? 押収したのか?」


 九十九は写真の中の洗面台の脇に置かれた、を指差して言った。

 松村が目を細めながら写真に顔を近づけた。

 

小石こいし……ですかね?」


 押収物リストを手にとり、順番にめくり上げる。

 

「石……あっ! ありました! 今は保管庫に置いてあると……! ちょっ……、九十九さん!」


 話している途中で九十九が急ぐように刑事部のドアを開け、部屋を出て行った。 

 慌てて松村は後を追った。

 

 地下に辿り着き、職員が受付をしている入口で素早く手続きをすると、保管庫に足を踏み入れた。九十九はそれが置いてあるはずの所定の棚に小走りに向かった――


「……ここだ」


 その前で足を止めると、棚の一番右上から視線を下ろしていった。


 一段目にまで達した時、突然、彼の動きが止まった。

 九十九はその場に屈み込んだ。

 

『西野裕子私物』


 その札が張られてあるダンボールを見つけるや否や、くようにふたを開けた。

 背後から松村が戸惑った表情でのぞき込む。

 彼女の私物が透明のジップ袋に入れられ、綺麗に揃えられていた。


 九十九は手袋をはめて、順番にそれらを慎重に一つずつ取り出していった。


 財布、携帯、化粧用のコンパクト、折れたハイヒール――

 順番に外に出し、床に置いた段ボールの蓋の上に積み上げていく。

 

 ダンボールの中が、空になった。

 

 九十九は咄嗟にもう一度、全ての私物が置かれた蓋の上を探った。

 

 思わず焦りの色を滲ませながら言った。


「……ない……小石がなくなってる……」

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