第13話――気配
「……え?」
明らかに
彼女は声を震わせて言った。
「今入ってきた人です。じっと、こっちを見てる」
刑事二人は辺りを見回した。
自分達以外、誰も見当たらない。
九十九は正美に向き直った。
「……安心してください。今、この部屋には、あなたと刑事の私達しかいません」
「……! 嘘つかないでください! ものすごい視線を……! 視線を感じるんです!」
正美が興奮しながら声を上げた。
九十九は訝し気に相棒とチラッと目を合わせると、また正美の方を向いた。
「……そりゃ、刑事二人があなたを見てますから……」
冗談交じりに笑いながら
突然、正美は耳を澄ますような素振りを始めた。
それを見て、九十九が遠慮がちに尋ねた。
「山下さん?……どうかしたんですか?」
正美は何かを探るように頭を泳がすと、不安そうな表情で問い返した。
「……誰か外にいます? 話し声が」
「……話し声?」
九十九がドアの方を振り返った。
何も聞こえない。
隣の相棒の方を向くと
ノブを掴むと
松村は廊下を見渡した。
「いや……誰もいませんが……」
そう呟いて、またドアを閉めた。
「ね」
「山下さん。もしや、由良さんから脅迫を受けているのでは?」
九十九が目を閉じたままの正美を見つめながら探るように問いただした。
「……! だから! 違うんです! 彼は本当に何もやってません!」
正美の表情にあからさまなイラつきが見えた。
「ね」
今度は若い松村の方が質問をした。
「事件当日のその警官の話では、彼が倒れたあなたの体に触れていたという証言があります。それは事実ですか?」
正美は動揺を隠せない様子で、頭を泳がせながら答えた。
「私は気を失ってて、覚えてません。……それより、あの……」
「ね」
「彼の証言では、あなたに
九十九が少し笑いを交えながら
すると、
「あの!」
突然、話を
九十九と松村が
焦りを滲ませた表情で、彼女は言った。
「あの……さっきから、声が聞こえませんか?」
「……え?」
刑事二人は周囲を見回した。
「いえ……何も聞こえませんが……」
松村が答えた。
「ね……」
「……! ほら! 今、はっきりと聞こえたでしょ?」
正美は同意を求めるように、目を閉じたまま頭をこちらに動かした。
九十九と松村が再度顔を見合わせた、その時だった。
「ねぇ」
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