【最終回】俺達4人が望む道

 初めて千尋さんとHしてから、俺は何度も千尋さんの部屋に足を運んでいる。

悠真君は俺達の関係を知っているので、追及してこない。


もちろん千尋さんも、そのことを彼に言っていない…はず。

言う時期を見極めているんだろう。俺はただ見守るだけだ。



 それから数日後、母さんの容態が回復した。俺の携帯に連絡が来たから間違いない。これにより、俺が水無瀬家に居候する必要がなくなる…。


荷物をまとめた俺は久しぶりに帰宅し、母さんの顔を観た。

隣の家で生活してたから、帰った来た感がないけど…。


「慎吾。迷惑はかけなかった?」

心配そうな顔をする母さん。


「もちろん」


「今度千尋さんにお礼を言いたいから、あんたも付いてくるのよ」


「わかった」


俺的には今でも良いけど、母さんは病み上がりだから避けたんだろう。

それに手ぶらでは失礼だから、何かお礼の品を渡したいと思ったに違いない。



 後日。俺は母さんと一緒に、千尋さんに会いに行く。

連絡なしで急に訪問してるけど、俺が知らない間に話を付けたんだろう。


母さんが呼鈴を押して間もなく、千尋さんが玄関から出てきた。


「…綾香さん。もう大丈夫そうね、安心したわ」

笑顔で僕と母さんを観る千尋さん。


「ええ。…千尋さんに迷惑をかけちゃったから、これ良かったら受け取って」

母さんはお礼の品を渡す。


「困った時はお互い様なのに。…ありがたく頂くわね」


「千尋さんがいなかったら、どうなっていたか…。本当にありがとう」

母さんが頭を下げたので、俺も一緒に下げる。


「当然のことをしたまでよ。私達の仲でしょ? 気にしないでほしいわ」


千尋さん…。迷惑そうな顔を1度もせず、俺を居候させてくれたんだよな…。

そんな簡単なことじゃないのは、俺にだってわかるぞ。


「ありがとう…」



 「……綾香さん。私のお願い、聴いてくれる?」

千尋さん…。何を言い出すんだろう?


「もちろんよ。遠慮なく言って」


「悠真がそちらに泊まりたいって言うのよ。うちに慎吾君が来てくれたから、今度はあの子がそうしたいみたい」


これって、悠真君と母さんをくっ付けようとしているのか?

俺とHしたこと、彼に話したのかな?


「え? でも…」

乗り気には見えない母さん。


俺達は隣同士で住んでるんだから、泊まる必要性が感じられないよな。

とはいえ、俺が千尋さんとHできたのは悠真君のおかげだ。


千尋さんの提案を受け入れてもらわないと…。


「俺もそうして欲しいな。悠真君に母さんの手料理を食べてもらいたいし、泊っている時だからこそできる話もあるしさ」


母さんの背中を押したつもりだが…。これでどうだ?


「…千尋さんにはお世話になったし、良いわよ」


これで話はまとまった。悠真君と母さんの関係がどうなるかは、彼次第だ。



 早速その日から、悠真君は俺の家に泊まりに来た。前からの約束通り、悠真君が母さんに何をしても、俺は見守ろう。


彼は初日から、積極的に行動しているようだ。俺の部屋にほとんどいないからな。

きっと俺と千尋さんの件で、我慢ができなくなったんだろう。



……ようやく俺の部屋に戻ってきた悠真君。


「どうだった?」

良い知らせなのを祈ろう。


「僕と綾香さんも、なんだって。慎吾君と母さんの時と同じだよ」

嬉しそうな顔をする悠真君。


そんな事ってあるのかよ? 同じ境遇の家族が隣同士に住んでいて、かつ異性の好みも同じ…。偶然では片付けられないぞ。


「僕、後で綾香さんの部屋に行くから…」


「わかった。楽しんでこいよ」


それから30分後ぐらい経った後、悠真君は俺の部屋から出て行く。


これで俺と悠真君は、互いの母さんへの想いを伝え理解してもらえた。

そしてHも済ますことができた。もっと関係を深めたいな…。


だったら、俺達4人が望む道はこれしかないだろ。明日話してみよう。



 次の日の夕食時。俺は悠真君と母さんに考えを伝えることにする…。


「悠真君。俺と千尋さんがHしたこと、母さんに伝えた?」


急にむせ始める母さん。食事中にする話じゃないよな。


「うん、伝えたよ」


「慎吾、今する話なの?」

落ち着いた母さんが俺に質問する。


「今じゃなくても良いけど、時間が経つと忘れるかもしれんし…」


「慎吾君、何か考えがあるんだね?」

さすが俺の親友。わかってるな。


「俺と悠真君は、お互いの母さんが好きだよな。だったら交換留学みたいに、俺達が住む家も交換するのはどうだ?」


「それって、つまり…」

考え込む悠真君。


「俺は水無瀬家に、悠真君はこの家に住むんだよ。そうすれば俺は千尋さんと一緒に過ごせるし、悠真君は母さんと一緒に過ごせる」


悠真君と母さんは黙って俺を観ている。


「俺達は隣同士だから、気軽に部屋を交換できるし母さんに会いにも行けるよな」


これがベストだと思うんだが…。


「僕は大賛成!」

悠真君、明らかにテンションが上がっている。


「……」

母さんは黙ったままだ。


やはり無茶なんだろうか?


「その話ってから言ったの?」


そんな心配してたのか、母さん…。


「嫌いになる訳ないだろ! 母さんには、いつも感謝してるさ!」

感謝してるけど、好きな人と一緒にいたい気持ちもある…。


「…なら良いわよ。すぐ会いに行けるしね。千尋さんには連絡しておくわ」


千尋さんは今仕事中だろう。隣から物音がしないからな。


話はまとまり、食事が再開される…。



 次の日の朝食中。母さんから俺と悠真君に、千尋さんの意見が伝えられる。

夜中の内に、母さんの携帯に連絡が入ったんだろう。


結果は…、だろうだ。


これが俺達4人が望む道なんだ。そしてそれは叶えられた。


「だったら、僕は部屋に戻って整理整頓するよ」

朝食後、悠真君は立ち上がる。


「俺もそうしないと…」


悠真君は自宅に、俺は自分の部屋に戻る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る