とあるJKの昔話

花宮零

とあるJKの昔話 語り部:JK

 ねぇねぇ、これを開いたってことはさ、JKの生態に興味があるんでしょ。それとも、語り部とJKのアンマッチ具合に惹かれた?

 そんなことない?照れ隠しって受け取るね。あたし基本的にポジティブだからさ。


 ああ、語り部って名乗ってるくらいだからもちろん語るよ?あーでも、琵琶法師とかほど語り上手くない。そこはごめんね?まあ、暇潰し程度に聞いてってよ。損はさせないから。


 あれは〜、いつだったかな。そう、去年のクリスマス。あの時はカレシがいたからさ。あ、JKっぽく彼ピとか言った方がいい?じゃそうするね。


 クリスマスにピがいるってなったらさ、そりゃ〜乙女心的にはプレゼントを渡したくなるじゃない。だから、その前の前の日くらいからプレゼント用意して、どんな服着ようかな〜とかずっと考えて、結局当日は思い浮かべてたものとは全く違うコーデで行くのね。


 メイクはナチュラルに。でも盛れる感じで。キラキラはマストだよね〜。あ、グリッターとか言った方がコスメ通っぽい?ま、なんでもいいんだけどさ。とにかくラメよラメ。


 でさ、プレゼント持って、ピの家に行って渡して帰る予定だったの。お互い受験だったしさ。あーんま時間なかったワケ。


 ピ、喜んでたよ〜?何あげたらいいかよくわかんなかったから、無難にペアキーホルダーとか買ってみて、「一緒につけよ♡」って言って渡したの。そしたらもうデレデレよ。


 今思うとさ、あれって地獄よね。だって別れたあとどうするの?捨てるの?それとも未練がましく取っとく?ま、それは語り部がとやかく言うことじゃないね。語り部はあくまで書かれていることを語るのみ。


 まあ渡すだけの予定だったからさ。じゃ、バイバ〜イみたいなノリで帰ろうとしたの。ピも勉強するよな〜私も頑張ろ〜とか思って。


 そしたらなんと、「家誰もいないからちょっとあがっていきなよ」なーんて言われたの!世の中の察しのいい女の子ならこの台詞聞いた時どうする?帰る?それとも積極的にお邪魔しちゃう?


 この子はそうじゃなかったの。いや、あたしの話じゃないよ?これ。たしかにあたしの話っぽく始めたけど全然あるJKの話をJKが語ってるだけ。あたしは語り部だからね。書いてあることを読んで語り継ぐのがお仕事。オーケー?


 続けるけどさ。この子はふつーにあがってったの。後者じゃね?って思うじゃん?違うの違うの。後者はピの思惑分かっててあがってるじゃない。この子は違うの。この子とピは幼なじみだったの。小学生の時からの付き合いね。だから、ピの思惑なんて全く気づいてないの。これが2個上のセンパイ♡とかだったら気づいてたかもしれないけど、ちっちゃい頃から一緒にいるとあんまそういう「女の勘」ってヤツは働かないみたい。


 それでピの家にあがって、ピの部屋に案内されたんだって。この子はあんまり人のお家に行く事なかったから、終始きょろきょろ興味深そうに見回してたの。まあ、受験生の部屋ってものが溢れかえってどこが床でどこが机?みたいなところあるけどね。あたし?あたしの部屋はキレイよ。急に人来ても大丈夫レベル。


 ってあたしの話はいいの。あたしは語り部!んで、部屋で他愛のない話をしてたワケ。「受験勉強やばい〜」とか、「志望校どこにしたんだっけ?」とかそんな話。受験生の他愛のない話ってほぼ勉強の話だから可哀想。


 ほんとに勉強の話ばっかだからさ。いつかネタも尽きるわけ。だいたい世の中のカップルに話し始めてくださいよーいドン!って言ったら何分持つの?30分くらいで離脱する人多そう。まあこの2人もそんな感じだったの。だから、ピが3階にある寝室に案内したんだって。ここまで来たらさすがにさっきは察せなかった女性方も察するわよね。でもまーだこの子は気が付かないの。えー!?って感じよね。ここまで来たらなんかもうバカなの!?みたいな。


 そんで寝室に入って、ピとこの子はベッドの縁に腰掛けてまたなんか話してたの。もうここまで展開進むと話してる内容とかどうでもいいじゃない?だから割愛するけどさ。え?語り部が勝手に割愛していいのかって?……そ、そりゃあだめだけど、ここの部分くだらなすぎて別に語り継がれなくてもいいんだもん!それよりちゃんと次からの部分耳の穴かっぽじって聞いといて!


 この子が気がついてないことにピはどれくらい気がついてたか分からないけど、ピもかなり積極的に動いたワケ。「一緒にベッド入ろうよ」って言ったのね。もうこれはどの女子でもムード変わったの合図!!って気づくじゃない。言わずもがなよ。この子まーだ気がつかないワケさ。もうびっくりよね。私だったら心臓ドキドキマックスハートって感じなのに。


 2人はベッドで一緒に寝っ転がりながら駄弁ってたの。こいつらいつまで不毛な会話続けんの!?って感じだけどまあ見逃してあげよ。ピも痺れを切らしたんじゃないかな〜。まさか自分の彼女がこんなに鈍感だとは思わなかったのかもね。そういえば彼氏は彼ピって言い方あるけど、彼女はなんて言うの?カノピ?でも漢字にしたら彼ピだから実質二人とも同じよね。そういう運命ってことにするわ。イッツディスティニーってね。


 ここからよ。みんな前のめりになってるんじゃない?それとも前置き長すぎてもはやスマホとの距離遠ざかってる?まあどっちでもいいんだけどさ。本番はここからよ。ピ、なんと彼女にキスしたわけ。ここでやーっとこの子も「はっ!ピがベッドに呼んだのはこういう意味ね!」ってなった訳。これが映画だったら途中退出待ったナシよね。それで、この子もそれ相応に応じるんだけど、まさかそれ以上進むとは思ってなかったの。幼なじみパワーって強いのね。男なんてただの肉慾の塊なのに。あ、こんなこと言うと炎上しちゃう。今のナシ、ナシ!


 でもピはやっぱり男なワケ。この子が知ってるピュアで純粋な小学生の時のピじゃないのよ。だからどんどんピはエスカレートしていくワケ。この子からしたら「エスカレート」なんだけど、普通のカップルなら、この展開は「ヒートアップ」よね。でもここでは「エスカレート」。この子はそういうことする気はゼロだったの。むしろ自分の体にコンプレックスを感じていたから、ピに体を触られるのも抵抗があったみたい。まあ私もさ〜、服着てるから何となくカバーされてるけどお腹の肉とか気になるよね〜。ぷよぷよしちゃってさぁ〜。え?この子が鈍感なのもあるけど私の茶々も進行具合に影響してるって?……たしかに。今後控えるわ。私は語り部JKなんだから。


 うーん、この後の内容は18禁っていうか、まあ想像すれば大体わかるじゃない。あ、今サイト閉じようとしたでしょ。よく小説概要見てよね。「性的描写あり」の項目にチェックついてないでしょ。んもう、JKがそれっぽい話始めたからってすーぐそういう展開に行くって思うアタリ、やっぱり男って……。これはタブーだね。読者はみんな女の子かもしれないし。うん。


 まあ事の顛末だけ言うと、2人は逢瀬を重ねることは無かったの。ピも女の子の体に触れられればそれで満足だったのかもしれないし、この子もノり気じゃないどころか拒否ってるからね。


 なんでこんなオチも大して面白くない話を語り継ごうって思ったかって?……んじゃあ、最後に一つだけイイこと教えてあげるよ。これは、語り部としてじゃなくて一人の「あたし」としての言葉。















 人間はね、嘘をつく時、本当のことを混ぜて言うんだよ。














 どう?ちょっとゾワっとした?まあ、みんなもホントっぽい嘘には気をつけてね。もしかしたらもう……ね。

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