05 教師の苦悩
TPOという意味において非常識な衣服を着た、非常識な高校生がふたり、立ち去った後の生徒指導室で、
「てごわい……」
それだけつぶやくと、手を動かしてペットボトルをねじ開け、のろのろと上体を起こして水をあおった。からからのスポンジにじっくりと水分がしみわたっていくようだ。
あのふたりは、やりにくい。机を蹴とばして「うっせーバカヤロー」などとわめくような、わかりやすい反抗をするわけではないが、そう、とにかく「やりにくい」のである。
……それでもな。キャップを閉め、ペットボトルを握ったままの右手首を傾けると、ごとん、と机に鈍くぶつかる衝撃がきた。
強く出にくいのは……。
部屋が無人であることをもう一度確かめ、余村は、生徒の個人情報に関わるファイルをそっと広げた。ことに問題児である
ふたりそろって、寮の入居者だ。しかも同室者である。女子寮は数年前に廃止され、男子寮生は現在10人程度で、2人部屋に入居することになっているが、なかでも19号室は問題児がふたりそろった状態になっており、このため寮内部でも「魔窟」「ブラックホール」「
余村は1枚ページをめくった。保証人の氏名と、家族構成の欄だ。無意識に眉がくもる。
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