第4話-2

 二人正座でお義母さんのありがたいお言葉を聞き、お義母さんがお風呂に行ったタイミングでどっちが次にシャワーを浴びるかでまた散々言い争いをし、結局じゃんけんに負けた私は居間でしばらく時間を潰さなくてはいけなくなった。


 ダイニングの椅子に座って足をプラプラ。手持ち無沙汰である。


 と、戸が開きお義父さんが入ってきた。


「おや、桜さんもお風呂かい?」


「はい、このあと」


「そうかい……というか桜さん」


「? どうしたんですか?」


 お義父さんは周囲を確認すると眉と声をひそめ


「さっき何があったんだい? すーちゃんに聞いても『なんでもない』の一点張りで……」


 どうやらお義母さんはさっき私たちに巻き込まれたことを隠したがっているようだ。まあ冷静になってから私も何してたんだと思ったけど。


 しかし家にいた四人中三人が朝から水を被っただなんて、本人が嫌であってもそりゃあお義父さんは何があったか知りたがるだろう。


 私はちょっと悩んだ後、「お義母さんには秘密ですよ?」と前置きをして事の顛末を話すことにした。





「はっはっはっはっ! あっはっはっはっはっ!」


「笑いすぎですよ。バレますよ、お義母さんに」


「だ、だって……! あまりにもおもしあっはっはっはっはっ!」


 そこで戸が開き、湯上がりの春夢が「上がったぞー」と言っ


「あはははははは!」


 たのを指さし、お義父さんはなお笑い続ける。


「なんで俺見て笑うんだよ! ちょ、え、親父? えぇ、誰がこんな……」


 そこでバチッと春夢と目が合った。


 と、さっきまでお風呂に入っていたはずの春夢の顔はサーっと青ざめていく。


「おま……そうか……遂に人を壊して……」


「何もしてないわよ! 勝手に納得しようとしないで!」


 こいつは私をなんだと思っているのだろう。


「とにかく、空いたんなら私行くわね」


 私は立ち上がり春夢の横を通り抜ける。


「店始まったら俺の部屋に来い」


「え?」


 その瞬間、春夢にそう告げられた。


 唐突すぎて振り返るも、しかしその春夢のぼそっとした伝言はもう一度発せられることはなく、春夢はそのまま台所に入ってしまった。そういやあいつ、朝ご飯まだだったわね。


「……まあいいわ」


 そろそろ体も冷えてきたし、私も早く入っちゃいましょう。


 一人笑いすぎて蹲っているお義父さんをそのままに、私はお風呂へ向かった。

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