「被害者面していた者たちへの復讐」⑦
容赦の無い踵踏みつけで、藤井がかけている眼鏡はぐしゃぐしゃに割れて潰れてしまう。割れたレンズの破片が彼の目…瞼や眼球に刺さって、さらに酷い傷を負ってしまう。
「いやあああ!?止めて、止めてよ!ねぇ止めてったら!」
「うるせぇな!?だから止めねーって言ってんだろ!こいつをぶち殺したいんだからよぉ、邪魔をするなよな!?」
そう怒鳴り返して、カイラは苛立たし気に藤井妻に拳銃を向ける。そうする間もカイラは藤井の顔面を踵で踏み続けていた。銃口が自分の顔に向けらた彼女は、顔が真っ青になりそこから一歩も動けなくなってしまう。
「———、——————!(もういい、俺のことはもういいから、二人で早く逃げてくれぇ……!)」
妻が危険に晒されてることを悟り、藤井は口をぱくぱくさせて喉も震わせながら、家族二人に逃げるよう何度も呼びかける。しかし一言として声に出すことは叶わなかった。
「というかマジで邪魔するなよ。俺がここで殺すのはこのヤニカスだけだ。てめぇの嫁と娘には特に恨みなんて無いから、無視しようって決めてんだよ。だからそこで黙って、この眼鏡デブクソヤニカスが殺されるところを見てろ。分かったらとっとと離れろよカス」
そう冷たく言い放つと、彼女に向けていた拳銃を藤井に向け直す。リボルバーを回して弾をセットして、引き金に指をあてる。
「てめぇみたいなモラルが欠けてマナーも全く守らない……何よりも周りのことを全く考えず自分勝手を振るいまくってる奴が、人妻もらったりガキつくったりしてんじゃねーよ!
反吐が出るんだよクソチ○カスが!!」
ドン!ドン!ドォン!
そうしてカイラは引き金を軽く引いて、藤井の顔や体目掛けて何度も発砲した。あっという間に蜂の巣と化した藤井は、傍にいる家族に最期の言葉をかけることも出来ずに死んでしまった。
「はっ、よかったな。家族に見守られながらこの世を去ることが出来て。俺としても、マナーを守らず路上喫煙するような人間のクズをまた一人、この世から消すことが出来て良い気分だ」
銃口から立ち上っていく硝煙に息を吹きかけて、カイラは嫌味たっぷりにそう吐き捨てるのだった。
いやあああ!と藤井の亡骸に顔をうずめながら泣き声をあげる藤井妻と、幼い故状況が理解出来ずだが彼女に倣ってとりあえず泣き出す藤井娘。
そして他の住人たちは血相変えて部屋へ逃げ込み、警察に通報していった。
「もう二人目か。だけど今日はこれで終わりに…なんてしない。まだだ。今日はあと一人、ぶち殺しておきたいクズ野郎がいる。さっさと次へ行こう」
殺人を終えたことでもう何の興味も無くなったと言わんばかりに、カイラは自転車に乗り、来た道の方向へ走らせて住宅地を去っていった。
背中越しに未だ聞こえる藤井の家族たちの泣き声に、「何であんなゴミクズの死を嘆き悲しむ奴がいるんだよ」と、カイラは少し苛立った。
藤井がいた住宅地を左へ抜けると、そこは大通りとなっており、スーパーやドラッグストアなどがある。
カイラが次に向かおうとしているのは、坂道状の大通りを下り、スーパーを通り過ぎた先にある喫茶店だった。
とはいえカイラにその喫茶店に入るつもりはない。正確には喫茶店の駐車エリアに用がある。
(午前中のこの時間……。これも確証がないから、不発に終わるかもしれないが……果たしてどうかな?)
スーパーの側を通過していき、そろそろ喫茶店が見えてくるところまで来た途端、カイラは準備をする。いつでも暴力を振るえる準備を…。
そして、喫茶店のすぐ前にある駐車エリアに、その男はいた。
「……あーあ。いたね。いちゃったねぇ!?そんなところで、路上喫煙なんかしちゃってさぁ?てめぇもさっき殺したあいつと同じ、反省の余地は全く無しと見た!」
歩道のすぐ向かいにある喫茶店の駐車エリアにて、刈り上げの短髪白髪のデブ体型で眼鏡をかけた男の老人が、ふてぶてしい態度で路上喫煙をしていた。
彼の名前は
話はまた二年前に遡る。路上喫煙をしていた藤井太貴をぶん殴った後も、カイラは同じ日別の場所にて同様の暴力を振るっていた。
その相手が関戸であり、事件が起きた場所は彼がよく利用している喫茶店の駐車エリアだった。
関戸はいつもその場所で路上喫煙をしていた。そしてカイラは以前からそのことを知っていた。当時カイラはその喫茶店の先にあるスーパーをよく利用していた為、自宅からスーパーの行き帰りで喫茶店をよく通り過ぎてもいた。
その時にカイラは時々関戸を見かけていた。彼が路上喫煙をしている様を。その時のカイラはたいてい反対側…車道を挟んでの逆の歩道にいたため、関戸による煙草の煙の被害が無かった。
その為カイラは苛立ちはあるものの、被害が無いからと関戸を見逃してやっていた。
ところがあの日…藤井をぶん殴った事件が起きた日。カイラはあの後スーパーで買い物をして、そのまま帰ろうとした。
しかしその途中で、いつも通り過ぎていた喫茶店の方から、嫌悪している有害な煙を吸い込んでしまったのを自覚した。
(あの老害、今日は俺がここを通り過ぎるタイミングで路上喫煙してやがる…!クソが、さっき住宅地で同じ路上喫煙してたクズを殴ったってのによぉ、またかよクソが!!)
藤井との一件で苛立っていた為、カイラは躊躇することなく関戸に近づいて、容赦の無い蹴りをくらわせたのだった。
「煙草は喫煙所で吸えや!んなとこで吸って、俺に有害な煙吸わせるなっ!!」
ドコォ! 「が、ぁ…!?」
後ろから突然蹴られて、関戸は激痛に顔をしかめつつ、自分をいきなり蹴ってきたカイラを呆然と見ていた。
その数週間後、関戸は藤井と同じく警察に被害届を出した。そのせいでカイラには関戸への暴行罪がついてしまった。
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