Episode4. 魔法使いの正体
入ってきた若い男性は正面の教壇に立つと、私たちを一瞥する。
私と宮本くんは慌てたように残された席に座った。彼はふふと笑うと口を開く。
「特別クラスの諸君。入学おめでとう。私は君たちのクラスの担任の橋本英太だ」
若い見た目とは裏腹に歳を増したような低く落ち着いた声。年齢不詳感が増した。
黒板に書かれた字で漢字を認識する。
「君たちは厳正なる審査から選抜された。君たちは今年から中1になる生徒から中3になる生徒がいるね」
え?とクラス中に疑問が満ちている。
「君たちは、秘密警察の一員になってもらう」
私たちが一斉に首を傾げるとまた、ふふと上品に笑った橋本先生は説明しよう。といった。
頭の回転が速いのか、意味を理解した不良のような見た目の青年がガタリと立ち上がる。
「俺はそんなことのために、ここに来たんじゃねぇっ!」
男性はそれを綺麗に見ないふりをして、集められた君たちの共通点を説明しよう。と。言った。
右の1番前の席に座る君は、
裏事業のために親に孤児院から買われ、才能が開花。
生物学に精通しており、さまざまな薬を作らされた。しかし、それは人殺しの加担であった。
あまりの才能に親からは少年院に入れられた。そこからは、不良少年のようだね。
先程立ち上がった青年を指す。
指を差されたのはピアスの穴だらけの青年。髪色も明るく赤色で、目元はよく見えない。
伸び切った前髪だけが見えていた。
彼はあ?とガラの悪い声を出すが、さすがは教師と言ったところか。動揺しない。
空気だけが息苦しく締まり続けた。
その後ろに座る彼女は医療に強い。
幼いながらに両親と手伝いで病院で働いていた。
しかし、君はその能力が故に人の死期を感じ取れるようになってしまった。
人の死を見過ぎだが故に、君は患者への心を失ってしまう。
君にとって病院は死にゆく人間を見なければならない苦痛だったんだ。
そうして君は患者の1人を追い詰めて、殺してしまう。
大人しそうに背を曲げ、俯く少女。こくりと頷く。それは、殺したという言葉の肯定だった。
フワフワの髪の毛の中にグレーに近い霞色の目が切なげに揺れている。
君たち2人には医学専門クラス専攻に入学してもらう。
先生の言葉に部屋は静まり返り、2人はただ己と過去を床に投影していた。
その隣の彼女は
嘘をつくことが嫌いなのに、嘘をつく才能があった君は多くの人を騙した。
そしてある老婆を詐欺によって殺してしまう。
それから君は自首し、少年院に入った。
少し癖毛の一つにまとめた髪の毛。快活そうな印象の吊り目の少女は、強く頷く。
覚悟の映った目が燃えていた。
その前の彼は
君は社会的な能力が高かった。リーダーシップやカリスマ性があり、将来有望株だった。
しかし父の失脚をきっかけに落ちぶれた。君は社会的なその能力を活かし、生きていたが。
計画的な君から、人は離れていった。
爽やか。そんな一言が似合う青年。薄い色の髪の毛にふわふわの天然パーマ。
可愛らしく爽やかな中には芯の強さを感じる。
ただ目を逸らさずに彼は先生を見ていた。
君たちは社会学専門クラス専攻だ。
2人は強く頷いた。理解より前に本能の強さが優ったのだ。
僕の目の前にいる君はITや物理の天才。
プログラミングなどで時代を席巻した。
しかし、ある時に能力を利用され、ハッキング犯として追われるようになる。
君は今も警察から逃げているんだろ?
髪が無造作に伸びているが、嫌味なことに綺麗なストレート。
クマだらけの読めない顔が無表情に頷いた。
その後ろの君は化学の天才。君は政府お抱えの科学者の息子。
名前は
政府の願望のためにさまざまな非道な兵器を開発した。それから、君は逃げた。
化学をする意味を失った。
マッシュ髪の青年。優しそうな見た目だ。小さく頷き俯く。
目にギリギリかぶらない前髪のせいで妖艶はな空気を漂わせていた。
君たちは科学専門クラスだ。
2人はそれぞれに頷く。
その隣の君は
それだけじゃないね、戦いにおいて全てのスキルが高い。
それで誤って、友人との喧嘩で致命症を負わせてしまった。
元々熱血症で優しい性格の君は、それから人に触れるのすら怖くなってしまったんだろう?
オールバックの硬そうな髪の毛の青年は筋が浮くほど深く爪を掌に食い込ませている。
獣のように爛々と光る目が先生を捉えていた。
その後ろの君は
君は元々空手で天才だと言われた。しかし、ある事件に巻き込まれ、君は過剰防衛で逮捕。
夢を絶たれた。
それからは肩身狭く、生きてきたんだね?
大きな瞳にパッツン前髪。背も小柄で空手が出来るようには見えない。
その少女は小さな体をもっと縮めて、自嘲的に笑った。
君たちは戦闘専門クラスだ。
2人は軽く目を見張った後、両手を固く握りしめる。
その列の2人は常人にはない能力を持っているんだよね?
手前の君は
喧騒の中で生きるのは、大変だろう?
また、聞いた音は全て覚えている。
ヘッドフォンを首にかけていたショートヘアーの少女は、忌々しそうに先生を見る。
嫌悪。分かりやすい言葉が似合っていた。
後ろの君はカメラアイの持ち主。
カメラアイなら結構いるが、君はそれが画力にも影響していた。
一度見たものは正確に絵に起こせる。
その記憶力がゆえ、忘れられない記憶もたくさんあるだろう。
ゆっくりと目を閉じた琥珀色に近い瞳の青年は、小さく笑った。
中性的で丸い眼鏡が似合っている。
君たちは特殊能力専門クラスだ。
2人は己の授けられた場所を大切そうに抱えた。
君は
心理学に長けていた。そのことから周囲からは気味悪がられんだろ?
人の全てが見えてしまう君は人を好きになれなかった。
そして、君。
先生は静かに教壇から降りて、私の机の前に立つ。
机の上にことりと軽い音が置かれた。
「え?」
ピストル?私の机の上に置かれたのはピストルだ。
次の瞬間先生が私に向かって、手に持っていたもう一つの拳銃を向けた。
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