第5話 現在3
「忘れさせてくれよ! 」
そう独り言を吐き出した私に先輩の弟は、先輩を彷彿とさせずにはいられない声音で全く同じ台詞を打ち上げた。
「ちなみに俺、彼女いますから。」
この瞬間、私と彼を隔てるように吹き付けて来た、絵のように素晴らしい桜吹雪を私はきっと一生、忘れることができないだろう。彼の兄が残した傷跡に添えて。
ある研究室の追憶 市井味才 @4seiAjisai
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