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「豆を投げるんだよ」


 節分の日、五歳の娘の熱い小さな手から数粒の大豆が放たれる。妻が手拍子をしながら囃したてる。


「ほら、鬼は外、福は内」


 娘はピタリと動きを止めて怪訝な顔をする。


「なんで鬼さんはお外なの。かわいそう」


 思わぬ言葉に、私は妻と顔を見合わせて笑った。怒り眉の娘を、妻とともに抱き締めた。

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