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 来た。十八時まで、あと一分。

 作業着の男性はまっすぐ店内を進み、悩むことなくお弁当を手にとってレジに向かう。時計の秒針がやっと頂点をさした。


「あの!」


 私は急いで駆け寄り、「内緒で」と弁当に半額シールを貼り付けた。私の頭の上で、ふ、と息が漏れ出た。


「はは、ありがとうございます」


 彼のからりとした笑い声で、私の心は温かくなった。

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