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「残りの携行糧食レーションは?」

「缶詰ひとつ」


 そう答える相棒は、眉頭を寄せた。コイツが強がるときの癖だった。


「さあ、二人で分けようぜ。で、食糧を探さないとな。二人そろって死んだらアイツに怒られちまう」


 いつも三人一緒だった幼馴染が俺たちを戦地へ見送ったときの表情を思い出す。


「ああ、アイツに泣き顔は似合わねえな」


 相棒が最後の缶詰を開けた。

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