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 ア。そう思ったときには、もう指に触るものはなかった。後ろを振り向かずとも、僕の指から落ちていくバトンが見えるようだった。僕が遅かった? コイツが早かった? それはわからない。観衆の声は全く聞こえないのに、タータンがバトンを弾く「コツン」という音は、やけに僕の耳にはっきりと届いた。

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