第14話おれは1人目の魔法少女を取り戻すためにズボンを下ろす

「がはっ、ごほっ」

 咳き込み、空気を肺に取り込む。まじ死ぬかと思った。

「姉様!姉様!」


 妹の必死な声が聞こえる。くそっ!遅かったのか。あの神様がよけいな真似をしなければ、くそ。


 魔瓶を構えて部屋の中に入る。豪華な客室だが、物が散乱し、鎖やら錠など物騒なものも見えた。


「大丈夫かっ!かりん!タマズサさんは無事かっ」

「はぁ、はぁ、」


 大きなベッドで身体をくねらせる妹がいた。


「はぁ、はぁ、姉様!姉様の残り香!くんかくんか!姉様の甘いかほり!!ふぅううううう!!!!」

 トリップしてやがる。


「何やっとんじゃい!!」

 枕を投げつけて、現実につれもどす。

「はっ!わたしは何を!ぺろぺろ!」


 くそっ!戻りきれていねえ!布団にもぐりこんで、何かを舐める音が聞こえる。くそっ!

 強い刺激!何が強い刺激!!

「おい!貧乳まな板娘!!」

「あ?」


 よし!反応した!


「こっちを見ろ!!」

 おれは布団から顔を出した妹の目の前でズボンをずらした。

「んぎょええ!目が!目が腐るぅ!!!」

 神々しい光が部屋中に広がる。


 なんだ、神様にケツを弄られたせいか。輝きが違う?

「汚いもん見せんな!ばかぁ!」

 ずぶ!!

「んご!!」


 何を思ったか、かりんは「ポラリス」を俺のしりに差し込んだのだ!


「あ、しまった!わ、わたしの杖!」

「うひょぁああああ!」


「ポラリス」は俺のケツの光に吸い込まれてしまった。


「わたしの杖を返しなさいよ!!」


「おふっ!!」


 今度は手を突っ込みぐりぐりとかき混ぜる。


「ポラリス!ポラリス!」

「内臓があああ!」


「お前たち!何を遊んでい、、る?!」

 先程の衛兵が戻ってきたのだった。

「そ、そういうことは家でやれ!」

「「ご、誤解です」」

 息ぴったりだった。

「早くしろ!叛逆した魔法少女たちを領主さまが捕らえたぞ!」



 城の地下。召喚魔法の儀式場に乱入した二人の少女の作戦は非常にシンプルだった。魔法陣をぶっ壊す。その混乱に乗じて脱出及び火事場泥棒するはずだった。


 魔法陣は魔力のこもった筆で特殊な文字を書くことで準備ができる。あとは必要な魔力を流し込むだけ。準備が大変な分安定的な作用を期待できる。

 つまり、魔法陣か魔力の供給源を経てば、魔法は発動しない。世界のバランスを壊しかねない異世界の召喚者はこれ以上増えないのだ。


「くそっ!ガブコ?!返事をしろっ!」


 さちよ自身を含め、現在アナホリーダ大陸にいる異世界人は4人。『黒服の杖職人』『国落(デリート・)としの赤鷲(イーグル)』『無限(インフィニティ)の泉(レイク)』『魔武器庫(デパート)』それぞれが世のバランスを崩しかねない能力を持っている。


 さちよは過去に1人異世界人と対峙している。当時一桁(シングル)として、何人もの魔法少女や魔道士を育てていたが、その異世界人との戦いで、弟子を何人も失い、いくつもの街を守れず壊滅させてしまった過去がある。具体的な内容は関係者しか知らないが、彼女は一桁(シングル)を退き、流浪の旅に出たのだった。


「がはっ…!完全に計算違いっす」


 辛うじて保った意識を敵にむけるも、狙いは定まらず。飛んできた岩に吹っ飛ばされた。


「ガブコ!!くそっ、ふざけた格好をしやがって」


「素晴らしい。これが『千変』の力か」


 領主がフリフリの魔法少女の服を着て、杖を向けていた。

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