第12話俺のケツを守った0番目の魔法少女の話②

領主の城に囚われの身になり、数日。

いつものように街にやってきた。たとえ、つらくても、日々お腹はすく。わたしには守らないといけない生活がある。でも、失踪した妹やあの少年のことで頭がいっぱいだった。

まさかの油断だった。

「はぁ…」

妹はともかく。あの少年の目。沈んだ瞳。助けずにはいられなかった。暗い目。

「まぁ、おしり光ってますけどね、くすっ」

「…たのしそうだな」

イライラしてるようだった。

「…領主さま…」

「おまえとの婚姻は3時間後行う。逃げ出したら、捕らえている貴様の妹は殺す」

「…はい…わかって…います。わたしは逃げません。ですから、妹には手を出さずに」

「わしに命令するつもりか」

「めっそうもございません。ですが、約束は守っていただきたく思います」

領主を上目遣いで見る。かわいらしい。だが領主はその瞳から目が一瞬離せなくなる。強い意思の瞳。

「…わかっておるわ、貴様がおとなしくしてる限りな」

領主はイライラとものにあたり、人にあたる。

杖さえあれば。領主から杖の気配を感じる。だが、手には錠、足は鎖につながっている。見えない球形のドームの中にに繋がれている

昔の仲間が今の私の姿を見たらなんと言うだろうか。

「きっと笑われてしまうのでしょうね…」

寂しそうに笑うのだった。

固く閉ざされた窓。鉄格子がされた窓。


「よし、城内につきそうだね」

「そっすね!カリンちゃんと変態さんはお姉さんの救出。あっしと師匠は領主に吠え面かかせるんすよね」

「異世界召喚の魔法陣を壊すんだろ?なんでだ」

「…過ぎた力は災いをひきおこすんだよ。派手に暴れてやるから、ちゃっちゃと救出してきな」

さちよさんは静かに言って、玄関を蹴破る。

「おっじゃまっしまーす!!領主どのー!野球しよーぜぇ」

火炎球を纏い、解き放つ。次々と増殖していく炎は衛兵たちを吹き飛ばしていく。

「領主さま!退職金頂きに地獄から舞い戻り参上したっす!」

氷の刃をブンブンと振るう。構えた短刀は触れたものを凍てつかせる。

2人は己の杖を抜く。

「さぁ蹴散らそうぜ相棒!『炎牛(ダブルブル)』!!」

胸元から出した赤い杖を振るうと、火球はさらに数と勢いを増す。

「『氷牙』『蒼蛇(アイスネーク)』調教するっすよ!!」

腰に携えた杖を抜き、魔力を流し込む。杖を起点として、氷のムチが完成する。一打ちで、激痛が走る。焼けるような冷気の魔法。


「なんで、生きて」「ぼ、亡霊だ」「なぜ、やつらが組んでいるんだ」城内はパニックと化した。

「みんな悪いっすけど、向かってくるなら容赦はしないっす」

「さぁ、地下はどっちだ!」



「いこう」

「姉様…」

俺たちはタマズサの元に急ぎ向かう。2人の魔法少女のおかげでほとんど衛兵に出会わずに済んでいる。一応おれは魔瓶を、カリンは杖を構えて恐る恐る進んでいく。石できた螺旋階段を上がっていく。


「おいお前たち!」

不意に後ろから声がかけられる。へ、平静に!落ち着け俺!

「そっちに行ってどうする。今、大広間が大変なことになっているんだぞ!早くこい!」

「は、はい!えっ、と、危険だから花嫁を避難させるように、領主様に言われたので」

とっさのことにしては、頭が回ったほうだろう。

これでも学校での遅刻と欠席の理由を大抵乗り切った俺様だあ。あ、でも、先生から、お前ん家ばあちゃん6回死んでんぞって言われたこともあったっけ。

「あばばばば?!!姉様がががががけけけ結婚?!!!」

バカヤロウ!!!!

くそっ!カリンは姉様大好きっこだから。このうその報告でさえ耐えられ無かったか!

「そいつ大丈夫か?!ものすごい勢いで震えてるが」

「ダダ大丈夫ですよ!ただの武者震い!!あは、あはははは」

「あぴゃびゃびゃひや!」

ていっ!

手刀で彼女を気絶させた。

「ちょっとこいつ興奮しすぎているので、連れていきますね!大広間にもすぐいきます!」

「あ、ああ」


石の階段を登りきった先にあるドアを魔瓶を使ってこじ開ける。

「タマズサさん!」

「久しぶりじゃな!」

そこにいたのは、タマズサさんではなかった。

「…神様?」

金髪ロリの神様がいた。

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