第11話俺のケツを守った0番目の魔法少女の話
「よう!お待たせ!まったか?」
大手を振って帰ってきた、赤髪の美女。ほんのり頬を赤く染め、はにかんだ。滲んだ汗を拭い、パタパタと胸元に風をおくる。
「今日もあっちーなっ」
ニカッと笑う彼女の笑顔は真夏の太陽のように爽やかだった。
「ごめんっす!遅刻っす!」
申し訳なさそうに上目遣いな彼女。心無しか普段より小さく見える。
「怒って、るっすか?」
不安げな潤んだ瞳を見つめていると、彼女を守ってあげたい気持ちになる。大丈夫だよっとつぶやくと
「ほんとっすか!」
と、子犬のように弾むのだった。
彼女らのスッキリとした笑顔は返り血に染まっており、丘の下は焼け焦げた氷のオブジェがいくつも燻っていた。
「いや、待ってない。大丈夫」
「全然、大丈夫だよ」
引き攣った笑顔で俺と妹は笑った。ちなみにおれの股間はぐっしょりと濡れていた。
「案外すんなり通れたっすね」
街の中を城を目指して進んでいく。
「…まぁ、あんだけボコられたらな」
自業自得とは言え、完全に心が折れていた兵士たちは大人しく俺たちに協力してくれた。
「なぁ、嬢ちゃん。お前の姉貴ってどんな奴なんだ?」
「あ、あっしも気になるっす。遠巻きに見て、美人だなってや思ったっすけど、話したことないっす」
あ、まずい。
「姉様は偉大です。なんたって姉様は姉様故に素晴らしいんです。まず、姉様のつむじの素晴らしさから語りましょうか」
妹は目をキラキラさせて、食い気味にいった。
「お姉様のつむじはとても美しいのです。わたしは眺めながらご飯を3杯!いや、5杯はいけます。均整のとれたつむじ。金の野原に吹く一陣の風のような素晴らしいつむじ。あぁ、お姉様のつむじ!じゅるり、つむじゅるるるる!!!!」
「や、やべぇ」
「師匠!怖いっす!カリンちゃん白目向いてよだれ垂れてます!!」
やれやれこうなったら小一時間は止まらない。
「あ、長くなるんで、ざっくり言うと俺の大恩人です」
カリンの姉タマズサは村の呪い師である。村のけが人や病気の人間を看病し、近隣の街にも出かけて魔法薬を販売したり、魔道具の調整をして村にお金を入れていた。辺境の地で、生活は貧しいながらも慎ましく皆が健康で生きれていたのは彼女の功績である。彼女の太陽のような笑顔に癒されたたものは数しれず。
誰にでも優しい人格者というのが彼女の印象だ。カリンの魔法が表面だけなのに対して、タマズサの魔法は存在そのものを別のものに変えることが出来る。今思えば凄いことである。カリンの転移魔法に巻き込まれるまでは魔法がとても難解なものであることはわからなかった。大抵は精霊や魔瓶によって生まれる魔法を増強したり、あやつったりすることで魔法としているケースが多い。
そんな中、彼女は自分の知る限り、魔法を失敗したことが無い。無生物ならなんでも。遠い洞窟にある魔石を、深海の水を、望むものを望む形で出現できた。ただし、変化させる為に魔力の近しいもので、かつ、価値が近くないといけないらしく、何でもかんでもというわけにはいかない。そういったことを瞬時に判断していた。
魔法少女No.50『千変』と呼ばれているのを知ったのは最近である。
「なるほどな~。ご立派なもんで。魔法少女も50番ともなりゃ。世の中の酸いも甘いも経験してるだろうに。みんなに慕われてるのはすげぇわ」
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