第4話
まさか、ゲームが始まる前からこんな展開が待っているなんて思いもしなかった。
「アメリア・ブラウン嬢!貴様との婚約を破棄する!」
高らかと宣言する王道金髪碧眼王太子とその王太子にぴったりとくっついているピンクブロンズの髪の可愛らしい少女。
彼らの両隣にいるのは宰相とか騎士団長とかお偉いさんの息子たちでその前には扇で口元を隠し、睨みをきかせる縦巻きロールの強気系美人。
しかし、立場的に悪役令嬢にあたる彼女は気丈に振舞っているとはいえ、僅かに震えているのが遠目でもわかった。
そう、乙女ゲーム定番の悪役令嬢の断罪イベントが今まさに行われているのだ!
まさか、20年前に一度断罪イベントをやっていたとは……思いもしなかった。
「愛あな」親世代断罪パーティーとでも呼ぶか。
「ルナティア様、この度はお見苦しいものをお見せして申し訳ございません」
「気にしなくていいわよ」
会場の2階に設置された王族用の観覧席(こんなのあったんだね)。
私はそこで先代国王ことソウディンクに微笑した。
そう、お願いというのは自称・愛し子が本当の愛し子でないことを証明すること。
別に少女が1人で「私愛し子〜」と言う分には不敬罪で捕まって終わりなのだが、王太子やらが絡んでしまった以上きちんと説明せざるを得ない状況になってしまった。
そんな時に運よく私が現れ、女神の私が説明すれば全てが収まると思ったらしい。
ソウディンクは下の惨事を見て、深い溜息をついた。
「あの娘が不躾にも貴女様の愛し子を名乗りまして。孫には何度もあの娘は女神の愛し子などでは無いと言ったのですが、彼奴は聞く耳を持ちませんでした」
「幼い頃から王太子も含め、彼らは女神教育を受けているはずでしょう?」
私はソウディンクに素朴な疑問を投げかける。
この国では、女神教育と呼ばれる教育がされているはずだ。
女神を信仰させるための洗脳教育、みたいなものだが、私はたまに現れるので国を左右する女神の機嫌を損ねないようにと文字の読み書きよりも重要視されている。
そんなことしなくても、別に機嫌なんか損ねないのだが、私の前の女神は短気だったのでしょうがない。
「……どんな貴族よりも厳しく女神教育をしてきました。1人しか現れない愛し子だって既にこの国にいると散々言い聞かせてきたはずなのですが」
ソウディンクはそう言って項垂れた。
ゲームではヒロインが愛し子だけど、生まれて早々に母親を亡くしたルーファスを可愛がりすぎた結果、ゲームとは違って愛し子にしてしまったのは認めよう。
愛し子って私が決められるもんじゃないんだよ。
愛情注いでたら勝手に愛し子になってて、女神を祀ってる教会で「うん、君愛し子」って言われるんだよ。
それに、たまたま出産の時期にマリーンズ家にいたっていうのもあるけど、子供の頃は天使だったんだよ、あの男は……!
黒髪サラサラだったし、目大きかったし、ほっぺでたこ焼き作れたし!
可愛くない訳が無い。
小さい頃のルーファスを思い出しつつ、下を見下ろす。
「まあ、彼女を愛し子だと思い込んだ理由は本人たちから聞くからいいけれど。私の出番はなくなるかもしれないわね……」
見下ろした先には僅かに怒気を纏ったルーファスの姿があった。
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