第32話 人の国 1

「・・・・・・ルカ・・・・・」

「ん・・・う・・・ん?」

「・・ルカ君・」


あ、僕の事?


「ルカ君」


ああ、そういえばミルルカがつけてくれた名前だった。

・・・・ミルルカ?

あれ? 僕、どうなったんだっけ?


「ルカ君!!」

『おわ! び、びっくりした!!?』

「ルカ君が生き返ったよ~!」


何がどうなった?!

ミルルカが僕を抱き締め顔を頭に擦り付けながらどうも泣きわめいているみたいだけど?


「このまま目を覚まさなかったら私もうどうしたら良いか! うわあああああん」

『大丈夫! 僕は大丈夫だから! ね、ほら! こんなに元気だよ?』

「・・本当に?」

『本当だよ!』

「・・・・・・・・・・うわあああああ、良かったよおおおおお!」


結局泣き止まなかった。

僕はミルルカの頭が近くにあったので優しく撫でて落ち着くのを待つことにした。

そう言えば、クルカ婆様や母様さんに伝えられたんだろうか?

今、ミルルカは泣いているけど、それは悲壮感は無く、どちらかと言うと安心感? を感じる。

つまり、上手く伝わったんだろう。

とにかく、お互いが無事を確認を出来たのは

上々だ。


『さてと、ミルルカ落ち着いた?』

「う、うん、ぐす・・」


僕の顔、多分ミルルカの涙と鼻水でベチャベチャだろうな。

ま、嫌な気持ちは無いから良いけどね。


『それで、ミルルカ。ここは何処かな?』


泣き止んだミルルカの顔を覗きこみながら、なるべく優しく質問してみた。


「えっとね、ここは奈落の穴の近くに建てられていた石作の神殿みたいなところの中だよ」


ああ、僕が落とされた時に居た所か。

なるほど、あの儀式の時にしか使われない建物なら、儀式直後なら安全かもね。


『あと、どれくらい時間が経ってるかな?』

「それほど、2回ほど夜が来て今は昼間だよ?」

『ええ!? そんなに時間が経ってたの?! まさかその間、ミルルカはずっと僕の側にいたの?』

「当たり前じゃない! 息はしてるけどいっこうに目を覚まさないルカ君を置いてどこにも行けないよ!」

『それじゃあ食べ物は? お水は?!』

「大丈夫! 魔族は5,6日くらい飲まず食わずでも平気だから!」


いや、それでも大変じゃないか?


『僕の為にそこまでしなくても』

「え・・・嫌だった?」

『そ、そんな事ないよ! 嬉しいよ!!』

「へへ、良かった。でも本当にこのまま目を覚まさなかったらと思うと不安で・・」


目に涙を浮かべながらまた僕を抱きしめてくるミルルカ。

心配かけてしまったのにちょっと後悔してる。

今度からは無理はしないようにしなければいけないし、赤ん坊の体だって事をもっと認識しておかなきゃいけないな。

とはいえ、色々あったけど地上に出て来れた。

上手くいけば結界を破壊できるかもしれない。

僕達のこれからの行動で、魔族の未来が大きく変わるかもしれない。


『ミルルカ、これからの事だけど』

「うん、分かってる。この結界の破壊もしくは攻略だよね?」

『うん、でもその為にはこの結界の事を調べなきゃいけないと思うんだ』

「そうだね。むやみに壊そうとしても、これだけの大掛かりな結界だもの。要となる装置なり魔法陣なりがあると思うの。先ずはそれを見つけないといけないし、その構築や構成方法を把握しておかないと、むやみに破壊して中にいる母様達に影響があるといけないから」

『そうだね。だから先ずは情報収集だね』

「うん」


そして情報を収集するためにはここで色々探してもたぶん分からないと思う。


『人の国、この結界を作った人の王族が居る街へ向かうしかないと思うんだ』

「でも、私が人の国に行っても大丈夫なのかな?」

『それは大丈夫だと思うよ? 見た目で人との違いはないから』

「そうなの?」

『うん、ただ綺麗な女の子として目立つかもしれないけどね』

「・・・・・・・・・・・・ボン!」


ボン?


あれミルルカの顔が赤くなってる?


「どうしてルカ君ってそう言う事をサラッと言えるのよ!!」

『え? 本当の事だから』

「・・・・・・・・・・・・ボン!」


あ、また。


「もう! とにかく人の国に行くのね?!」

『そう、先ずは人の国に行ってみよう』

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