第31話 地上 6
あれは・・・・人影?
うん、間違いない人だ。
それもかなりの人数が居る。
見える映像がそれほど鮮明じゃないから特定は出来ないけど、あれは間違いなく魔族の人達だ。
「ルカ君! どう?! 皆は?」
『うん、居る!』
「本当?!」
『それに、ここたぶん箱庭だ。僕が見たあの天井いっぱいに突き出ていた魔水晶を通して見えてるみたい』
「被害は? どんな感じなの?」
『ちょっと待ってね・・・』
僕は光の流れを少し変え動かして見ると、また違う視点から箱庭の中が見えた。
『えっと・・・・草木も無事・・・特に壁が崩れてるとか天井が崩壊してるとかは無いみたい。これなら集落に居た人達は殆ど無事かも』
「良かったあ~!! あ、でも母様達は・・」
そうだ、ミルルカと一緒に調査に出ていた母様さん達が無事なのかはこの映像だけでは確認できない。
個人を確定するにはもう少し拡大する必要があるけど、レンズでもない限り難しそうだ。
何とかして連絡する手段は・・・・念話くらいしか思いつかない。
でも、念話は繋がりが強くないと相手に送れないし、発信するには自分で念話の魔法を発動しないといけないから・・・難しいか。
でも駄目もとだ。
『ミルルカ、僕の背中に手を置いてみて』
「どうするの?」
『この魔水晶に光魔法で放った光に意識を乗せたら奈落の底が見えたんだ。もしかしたらミルルカの意識を一緒に乗せたら、念話は出来なくてもクルカ婆様や母様さんの意識を掴む事は出来るかもしれない』
「・・・・・・・・・・ん、やってみる」
ミルルカは大きく頷くと、ゆっくりと僕の背の方に座ると優しく背中に手を添えてきた。
『僕の中にミルルカの意識と言うか想いを注ぎ込むようにしてみて』
「・・分かった。行くよ・・・お母様・・・お婆様・・・」
背中が温かい。
ミルルカを感じる・・・・うん、来た。
僕とミルルカは念話が通じていたから、思った通りミルルカとの相性が良いみたい。
このミルルカの意識を僕の意思と合わせて、光の流れに乗せて・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・なかなか掴めない。
『もっと強く想って! 僕もフォローするから!』
「分かった。でもルカ君大丈夫?」
『大丈夫、大丈夫! まだ特に問題ないよ。さあ意識を手中させるよ』
「はい!」
とは言ったものの、結構これきつい。
思ったより魔力消費が多い。
たぶん継続的に数キロはある距離を光で放ち続けいるのと、意識をそれに乗せなきゃいけないから思考処理の負担が大きいのか・・・まあ赤ちゃんの脳みそだもんな。
まだ負担が大きいか。
なら、急いで見つけないと長くは持たない。
僕は映像で見えた人を追いながら、クルカ婆様と母様さんの魔力波動を探る。
『早く見つけないと・・・』
「ルカ君、大丈夫? 何だか意識が乱れて来てない?」
『もうちょっと! 大丈夫だから』
「もう良いよ! いったん止めよう?」
『もうちょっと・・・・・・・・・・・見つけた!! クルカ婆様も母様さんも居た!』
「え?」
『ミルルカ! 自分が無事だという事を想って送るんだ!』
「・・は、はい!! ・・・・お婆様! お母様! ミルルカもルカ君み無事だよ!! 必ず、必ず奈皆の所に戻るから!!」
・・・・・伝わったかな? でもこれ以上はもう限界・・・
薄れゆく意識の中で最後に見たのは、エルカ母様さんが僕の方を見ていた様な気がした。
「ルカ君? ルカ君!!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「え?」
「エルカ! 今、感じたか?!」
「はい! お母様! あれはミルルカの気配です! それにあの子の気配も」
「やはりの・・・たぶん大丈夫じゃ。あの子等は無事じゃ」
「・・・そうですね。気配に乱れは有りましたが、危険と言う感じは無かったですね」
「そうじゃの。どちらかと言うと凄く遠くに居る感じじゃった」
「・・・・・まさか、地上とか?」
「あの時、赤ん坊が消えたのは、たぶん転移魔法じゃ。有り得るかもしれんの」
「無事なら何処に居ても良いです。ただもし地上ならあの子達無理して結界を破壊しようとか考えないでしょうか?」
「まあ、考えるじゃろうな。だがわしらにはどうする事もできん。じゃが、この結界を破る方法をわしらの方でも今一度検討する事は出来るぞ?」
「そうですね。もしあの子達が地上に出られたのなら、結界にも綻びが出て来ていると考えても良いでしょうし」
「そうじゃの・・・しかし、あの赤ん坊が来てから色々有り過ぎるの」
「案外、本当にプリムスロード様の生まれ変わりかもしれませんよ?」
「ふむ、そうじゃの・・・・・よし! ミルルカ達の捜索は中止とする! 被害報告をまとめ今後の方針を固める! 皆を集めてくれ!!」
「はい。お母様」
ミルルカ、頑張るのよ。
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