第29話 地上 4
僕とミルルカは上空から確認できていた道らしき所に到達していた。
ただその道には出ず、道路脇の10メートルくらい木々の中で周りに注意しながらゆっくりと並走していた。
『あれって馬車の轍かな? そんなに頻繁には使われてないけど、轍が出来たのは最近な気がする』
「凄い! ルカ君ってそんなことまで分かるの?!」
『ま、まあね』
ミルルカの新鮮な驚きが微笑ましいけど、その度に僕の事を凄い! と誉めてくれるのはちょっと恥ずかしい。
嬉しいけどちょっと大袈裟だよ。
『別にそんなに凄くないからね?』
「そんな事ないよ! 私には新しいのか古いのかなんて分からないもの!」
まあ、新しい轍かどうかなんて誰でも分かるとは思うけど、奈落生まれの奈落育ちのミルルカは馬車なんて見たことないだろうからな。
『とにかくこの道、たぶん僕が贄として落とされた時に人族が使ったものかもしれない。だとしたらこの先に奈落の穴が在りそう』
「このまま向かう?」
『そうだね・・ミルルカ魔力感知出来そう?』
「う~ん・・・だいぶ回復してきたから大丈夫だよ!」
『じゃあ、魔力の濃い方というか魔獣とかが多い方って分かる?』
「ちょっと待ってね・・サーチ・・・・・・・・・ん! あっちかな? 反対の方は魔力自体が薄くなってるし、向こうには魔獣を十数体確認できるよ」
火山とは反対の方か・・・・たぶん奈落の穴はあっちか・・・・
『よし! たぶんこの道は贄の儀式の時にだけ使う専用道路じゃないかと思うからこの先に奈落の穴があると思う』
「分かったわ、じゃああまり使っていない道なら歩いても平気だよね?」
『うん、大丈夫だと思う。時間も欲しいし早く奈落の穴に着きたいからね』
「よし! じゃあルカ君、私の胸に顔埋めてしっかり固定するんだよ。じゃないと舌かむからね!」
え? まさか身体強化最大でいくつもり?
『そ、そこまで早くしなくても・・・』
「大丈夫!! これだけ平坦ならそんなに振動はこないから、ね? じゃあ行くよ!」
『ちょ、ちょっと心の準備・・ヒッ?!!』
一瞬で僕の顔がミルルカの胸に張り付いて離れなくなった。
い、息が!!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「到着したよ!」
『・・・・・・・・・・・・・え??!」
あっという間の出来事だった。
気づいたら僕の目の前についこの間見た光景と同じ物が広がっている場所に立っていた。
あ、ミルルカが立っていて僕は抱えられてるだけだけどね。
「これが奈落の穴・・・」
『そう、この下深くにミルルカ達が住む奈落の底がある』
「そうなんだ」
ぼそっ確かめるように呟いたミルルカが僕を抱える手に力を入れた。
何か思うところが有るのだろうけど、今はそれを確認している時間はない。
『ミルルカ、この周辺で魔水晶が地面かどこかから突出している所を探そう。たぶんその魔水晶からあの集落のあった箱庭の魔水晶と繋がってるはずだから』
「う、うん分かった!」
そう言ってミルルカは僕を抱えながら検討をつけ走り出した。
こういうとき僕って何の役にも立たないのが悔しい!
早くホバーとウィンドの魔法を覚えてフライで飛べる様に頑張らないと。
よし、ミルルカが探している間に少しでも魔王さんの知識とさっきのミルルカのホバーの感覚を理解して・・・・
「見つかったよ!」
『え? もう?!』
「うん、これだよね? たぶん」
ミルルカが指差した先、森の木々がぽっかりと無くなった場所に、あの箱庭と同じ様にびっしりと突き出ている魔水晶が広がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます