第28話 地上 3
僕達は、火山より風上側に降り立った。
空から降りる時、周辺の樹々の中に人種やそれに近しい種族などが居ないか確認したけど、だだっ広い森が続いているだけで他には特に見られなかった。
ただ、ここからそれ程遠くないところに道の様なものが確認できていた。
「あと数時間は魔力回復に努めないと魔力感知もままならないよ?」
『ふむ、そうするとさっき見えた道の方に行ってみようか?』
「そうだね・・・・・」
『どうかした? ミルルカ?』
「え? いえ、今さらだけどこの会話ってルカ君のは念話だよね?」
『え? どうだろう? 無意識に使ってたからどうやったら使えるようになったかは分からないんだ。それが何かおかしかった?』
「う、うんん。ただ端からみたら私が独り言をずっと喋ってる様に見えないかなって?」
なるほど。
赤ん坊を抱え、しかも戦闘用の防具と刀を携えてる美少女が独り言をブツブツ言いながら歩いているとなると、不審者にしか見えない?
だったら・・
『ミルルカも念話で話せば良いんじゃない?』
「え? 私、念話は使えないよ?」
『じゃあ試しに僕に向けて、頭の中だけで言葉にしてみて?』
「う~んん・・・やってみる!」
うん、このポジティブさはミルルカの魅力だね。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ル』
『お??』
『・・・・・ルカ君、スキ』
『え? えええ? 今、何て言ったの?!』
『え? 聞こえたの? え? 今、私何て思い浮かべて・・・・・?!!』
ミルルカの顔がみるみる赤く変わって、耳まで赤くなっている。
『ルカ君、ちょっとここに居てね』
そう言うとミルルカはちょうど大きな木が倒れ横倒しになっている前に僕をチョコンと
座らせると、数歩下がるとクルッと反対を向いて座り込んでしまった。
『ミルルカ?』
『ちょっと! 時間を下さい!!』
『お、おう!』
両手で顔を押さえて深呼吸とかしてる。
まあ、僕もあのままミルルカと目を会わせるのは恥ずかしかったからちょうど良かった。
でも、あの言葉って・・・・
『よし! 大丈夫!!』
踏ん切りがついたのか、スクッと立ち上がると僕の方に戻って来た。
『今のは忘れて・・』
『え? じゃあ違うの?』
『ち、違い・・くない! だけどそれはルカ君が大きくなって、それでも・・・素敵なら・・・まあ、素敵にしかならないんだろうけど・・・・ああ!! 大人になったらの話よ!』
う~ん、よくわからんけど、そう言うことにしておいた方が僕のためにも良いしね。
『ま、まあ分かった。でも念話は出来てるね?』
『え、あ、本当だ。でもこれって・・・』
『そう。僕が親で、ミルルカが子という関係で成り立つ念話だ。自分から話しかけたい場合は、親になる必要がある。つまり、発信と受信の関係で発信が重要というわけ』
『よし! 私も念話の発信ができるように頑張ってみる!』
拳を握りしめて決意するミルルカ。
上手く話をそらしたミルルカは再び僕を抱えて歩きだした。
それからものの5分程度でその道の前までやってきていた。
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