第21話 異変 4
「ふあ~ああ・・・むにゃ」
『う~ん・・・眠い』
「どうしたのじゃ? 眠そうじゃの?」
クルカ婆様に聞かれた通りとても眠いです。
お風呂の一件から、何故かミルルカがご機嫌で何かと僕とのスキンシップを取りたがる様になった。
まあそれはまだ良いのだけど、晩御飯を済ませて・・・あ、僕の場合まだ咀嚼が上手く出来なかったので、野菜とミンチのスープにヤギに似た魔獣のお乳をいただきました。
結構美味しかったです。
岩塩が手に入るのが大きいね。
集落から少し離れた所になるらしいけど、岩塩が採掘出来る場所があるみたい。
で、食事もミルルカとエルカ母様さんと一緒にいただいて・・・・・・・それからが問題だった。
ミルルカがどうしても僕と一緒に寝ると言い出したからだ。
一緒に寝るだけなら問題無かったんだけど、あの風呂の件でどうしても僕がミルルカを意識してしまって・・・。
断ったんだよ!
本当だよ!
でも身ぶり手振りだけじゃあ伝わりにくいし、伝わったとしても、この赤ん坊の体で抵抗なんて出来るわけないもん。
で、結局断る事もできず、エルカ母様さんの悪ふざけもあってミルルカと半強制的に一緒に寝ることになってしまった。
案の定、僕はミルルカの寝息と直接伝わる肌の感触にドギマギが止まらず、ほぼ寝れない状態のまま朝を迎えてしまったと言うわけだ。
「ふぁ~ああ・・・」
「ほれ、しゃんとおし、ミルルカ達が出発するぞ」
そうだった。
今からエルカ母様さんとミルルカをリーダーとした探索部隊が出発するんだった。
「おはよう! 赤ちゃんさん!」
ミルルカが満面の笑顔で駆け寄って来るなり、クルカ婆様から僕を取り上げ、頬に自分の頬を擦り付け始めた。
「う~ん!! 良い臭い! 夕べはこの臭いをかぎながら寝たおかげか体調絶好調だよ!」
僕は寝不足ですけどね。
「それでミルルカ、準備はできたのかの?」
「お婆様、準備は完了したよ! これから出発するよ」
「そうか」
今回探索する所はこの集落よりさらに下層の溶岩とかが流れ出している場所らしい。
その為に水属性を持つ魔族の人を3人、それ以外に戦闘力の高い魔族の人を2名にエルカ母様とミルルカの7人で構成したみたいだ。
その7人とも、それぞれに適正にあった黒の防具を身に付け、腰には剣を携えていた。
防具の身に付け方や形もそれぞれだし、剣も長剣から短剣、特にミルルカとエルカ母様さんのは綺麗な反りのある日本刀みたいな形をしていた。
それにしてもみんなが大きなリュックを担いでるけどこれって?
「なあに? このリュックが気になるの?」
僕がリュックに目が行っているのが分かったのかミルルカが僕に問いかけてきたので小さく頷いてみた。
「これはね殆どが薬草と食料だよ。調査に最低でも4日は掛かるだろうから、予備も含めて6日分を持っていかなきゃいけないからこんなに大きくなるんだよ」
・・・・丁寧に教えてくれるのは良いんだけどその間、ずううううっと頬擦りし続けてた。
まあ、僕も気持ち良いから騒がないけど、少しセーブしてくれるともっと嬉しんだけど。
「ミルルカそろそろ行くわよ」
エルカ母様さんが見かねて声をかけに来てくれた。
「え? もう!? もう少し赤ちゃんさん成分の堪能させて!」
「もう十分よ。それと忘れてたけど、いい加減赤ちゃんさんの名前考えてあげないといけないんじゃない?」
「あ!! しまった! 忘れてた!!」
忘れてたんですか・・
「それじゃあ調査は延期して・・」
「ダメよ! この調査の間に考えなさい」
「ええ! でも!」
「でもじゃないよ! ミルルカさっさと行って帰ってこないとこのわしが勝手に決めるぞ?」
「それはダメ!! 私が考えるの! お婆様! 絶対に名前考えちゃダメだからね!」
「だったら、さっさと行っておいで!」
「うう・・仕方ないから行ってくるね。私の事忘れないでね?」
どうやったらミルルカの事を忘れる事が出来るのか逆に聞いてみたいよ。
これだけ優しくしてくれる可愛い女の子の事を忘れるわけないじゃない。
僕は行きたくなさそうな顔をしているミルルカの頬に手をパチンと当てて心の中で
『行っておいで、待ってるから』
と言った。
「?! う、うん! 行ってくるね!♪」
ん? 何だか想った事が伝わった?
まあ、伝わったかどうかわからないけど、ミルルカが僕をお婆様に預けて出発できたのは良かった。
「無事に帰ってくるんじゃぞ・・・」
お婆様の一言が僕を不安にさせた。
エルカ母様さんもいるし、ミルルカの身体能力や魔法力も凄いと思う。
それに先日の赤竜の件もあったのでそれなりの準備もしている。
だから心配する事は何もないはずだと分かっているんだけど・・・・・元気いっぱいのミルルカの後ろ姿が弱々しく見えた気がした。
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