第19話 異変 2

「どうして駄目なの?!」


ミルルカがクルカ婆様に噛みついてる。

僕もてっきりミルルカに同行して行くもんだと思ってた。

話しを聞く限り、安全な調査とは思えない。

今回の様な事がまた起こるかもしれないんだ。

だとしたら、治癒魔法が使える僕が一緒に行くべきだと思うんだけど・・・。


「そりゃあ、聖属性持ちで治癒魔法が発動できるこの子がいてくれたら心強いかもしれんがの、言うてもこの子はまだ赤ん坊なんだよ? 言葉を理解しようが魔法を使えようがまだ小さな体の赤ん坊なんだよ? その子にあの灼熱のエリアに連れて行くきかい?」

「それは・・・・」


灼熱、そうかマグマの活動調査なら相当の熱さを覚悟しなきゃいけない。

だけど今の僕にはそれに対抗できるスキルも魔法も発動出来ない。

魔王さんの記憶にはそれらしい魔法や対抗スキルの知識もあるけど、それをどう取得し発動出来るかは今のところ分からないか。

だとしたら僕がいたら足手まといにしかならないかも。


「それもそうね。私もあの治癒魔法を見たらあの子がまだ喋る事もできない赤ん坊だって事忘れてたわ」


エルカ母様さんそんな事を言ってる。

やっぱり赤ん坊で魔法を使うのはありえないんだろうな。


「まあミルルカも生まれて1年くらいに炎系魔法をぶっ放してクルカ婆様の髪を燃やした事があったけど、あれは遊びの延長で無意識だったものね。でもあの赤ちゃんは意識的にしていた違いはあるけどそれでも赤ちゃんだもの。今回の調査に同行させるのは大人の身勝手というものよ」


なんだ、ミルルカも赤ん坊の時に魔法をぶっ放してたんだ。

だから僕が魔法を発動させてもそれ程怖がらなかったのか。


「分かったわ。赤ちゃんさんは連れて行かない」

「その方がええじゃろう」

「うう、でもあのプニプニした感触に当分触れないと思うと・・・・理性が保てるかしら」

「・・・・のう、エルカ」

「はい、何でしょうクルカ婆様」

「ミルルカのあれは、母性愛か? それとも性癖か? 誰に似たんじゃ?」

「いやですね、クルカ・・・お母様。血筋ですよ」

「・・・・・・・・・・・・・なるほど、納得じゃ」


なんだか三人の目が僕の方に向いてないか?


「じゃあ、明日出発するとして、赤ちゃんさん、そろそろ起きると思うから一緒にお風呂に行ってくるね!」

「え? ずるい! ミルルカ! お母さんも連れて行ってよ!」

「こら! 待つんじゃ!」

「どうかしました? お婆様」

「・・・・・・・・・・わしも連れて行け」

「うふふふ! じゃあ三人で赤ちゃんさんの体を隅々まで洗ってあげよう!」


なんでそんなに嬉しそうなんだ?


「じゃあ、私が赤ちゃんの洗い方を教えてあげるわね」

「何を言うんじゃ、それはわしの方が適任じゃぞ!」

「お母様はお歳なのですから無理なさらずにゆっくりとお風呂に浸かっていただければ」

「ふん! まだまだひよっこのエルカには任せられんよ!」

「200才を越えるひよっこなんて居ませんよ」


何故かクルカ婆様とエルカ母様さんの言い合いが始まった。


「二人はほっといて行こう赤ちゃんさん」


二人が言い合っている中、ミルルカが僕の所に来て手際よく抱えると、スタスタと歩き出した。


「ああ! 待ちなさい! ミルルカ!」

「これ! わしを置いて行くな!!」


お風呂に入れるのは嬉しいけど、何故か不安になるのは気のせいだろうか?

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