第15話 初魔法 4

「そう・・・・」


あ、何だか思いつめた様な声がミルルカから漏れた・・・それにクルカ婆様の顔も僕を睨むように見つめてない? やっぱり頷いたのは、まずかったか?


「ガヤ、ガヤ、ザワ、ザワ・・・」

「おい、あの贄の赤ん坊・・言葉がわかるのか?」

「そんな事あるの?」

「いや、聞いた事無いぞ」


ああ、周りに集まっていた人々からも僕の事を話し合ってるみたい。

しかも聞いた事が無い、とか・・・・やっぱり頷いたのは失敗だったか?


「そう、そうなんだ!! 赤ちゃんさん偉い! 凄い! 天才!!」

「本当にのお! こんな赤子が居るとわのお!」


あれ? ミルルカもクルカ婆様も喜んでないか? あれ?


「すげえな!」

「あの赤ちゃん! 凄い!」

「エオナを助けてくれてありがとう!!」


誰一人として怖がってない?

それどころかお礼まで言ってくれてる。


『よ、良かったあ~!! もしかして気味悪がられて捨てられるかと思った!!』


「奇跡じゃ。1000年ぶりに人族に感謝せねばなるまいて。このような救世主たる赤ん坊を我ら魔族に与えてくれたことにじゃ!」

「それは違うは、クルカ婆様!」


クルカ婆様の言葉にミルルカが異を唱えた。


「人の王族はやっぱり救いようのない馬鹿ですよ! こんな可愛らしく大天才の赤ちゃんさんを贄として殺そうとしたのですから。それより赤ちゃんさんをこの奈落の底まで無事に届けてくれた神様に感謝ですよ!」

「そうじゃの、いや待て! これは我らが魔王プリムスロード様の魂が導いてくれたのかもしれんぞ?」


クルカ婆様、ほぼ正解です!

半分は無理矢理でしたけどね。

皆が喜んでくれて良かった。取り敢えず安心した・・・


「とは言え喜んでばかりはおられん。エルカ達の事も心配じゃからの」

「はい、クルカ婆様」

「相手が赤竜となると無事では済まんはずじゃ。ミルルカ、行ってくれか?」

「当たり前です! ただ、出来ればだけど赤ちゃんさんの事だけど・・・」


少し言い難そうにしながら僕の事を覗いてくるミルルカ。

たぶん一緒に行って欲しいんだろう。

もし被害が大きくその場で治癒とかしなきゃいけないとなれば、僕が一緒に行った方が良いに決まってる。


「あう、うう!」


僕はミルルカに向かって両手を広げて抱っこを要求。

連れて行ってくれとアピールしてみた。

でも、よく考えてみたら意識は大人なんだから、女の子に抱っこをせがむのって・・・・・この際大人の意識は捨てよう。

という事で、少し恥ずかしいけど改めて抱っこを要求だ!


「行ってくれるの?」


戸惑いながらも聞き直すミルルカに僕は今一度抱っこを強要する。


「ありがとう! 赤ちゃんさん!!」

「よし、ミルルカ、そして贄の子よ。皆を頼む! わしはここを動くわけにはいかんからの、他の者をあと2,3人連れて向かってくれ!」

「了解! お婆様! よし赤ちゃんさん、お願い!」


ミルルカは僕を抱え上げ、クルカ婆様に一礼すると、直ぐに踵を返し集会場を出て走り出した。


「赤ちゃんさん、一旦お家に戻って準備をするよ」


そう言うと更に加速し集落の中を走り抜けていく。


「うぎゃああぁあああ!!」


しまったあ!!

ミルルカのジェットコースターの事忘れてた!

それにジェットコースター朝より更に早くなってない?

横Gが凄いんだもん!

失神しない様に注意しなきゃ!


僕は今から向かう場所の被害の事よりも、今、この時に起こるだろう死のジェットコースターの方が気になって、気になって・・・・


「なあに? 赤ちゃんさん」


僕の気持ちを察知したのか、ミルルカ訪ねてきた。

なので心配そうな顔をしてみた。


「分かった! 心配しなくても急いで準備するから! そしたら最大速度で現場に向かうから!」


失神、確定したかも・・・・

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