第14話 初魔法 3

「どうしたのじゃ?」


不思議そうに僕を見るクルカ婆様。

とにかく僕は必死に寝ているエオナさんに近づこうと手を伸ばす。


「うう! うう!! ぅあ! あああ!!」


言葉が出ないってこんなに情けないのか。


「どうした? 何を暴れておる?」


『だから、エオナさんを触らせてくれ!!』


「よく分らんが・・・もしやエオナに触りたいのか?」


『そう! そうだよ! クルカ婆様!!』


思わず心の中で叫んでいたら首を縦に振ったみたいだ。


「まるでそうだと言ってるみたいじゃの・・・・・・・ふむ、もしや・・・」


何か考えたのか、クルカ婆様が僕を抱えたままエオナさんに近づき座ってくれた。


「これで良いのか?」


僕は更に手を伸ばす。


「うう! うう!! ううう!」


『よし! 届いた!』


改めて自分の手を見ると小さい。

なんだこの指? 短っ!!

か〇ぱえびせんに似てないか?


『あ、違う! 今はそれどころじゃない!』


僕は改めてエオナさんに触れた自分の掌に力を溜める様に集中させた。


『イメージ! エオナさんの体に自分の意識を入り込ませ違和感のある所を全て確認! ・・・・良し! 次に違和感のある所に僕の魔力を行き渡らせて・・・元の形に戻る様に念じ続ける・・・』


僕の中にある聖属性の力がそうさせるのか、魔王さんの記憶にある魔法知識でそうした方が良いと思えたのか、ともかく僕はそうするべきだと思った事をやってみた。


「ん? な、なんと!??」


集中していたせいだろうか?

どこか遠くの方でクルカ婆様が驚いている声が聞こえた気がした。

今はそれより目の前のエオナさんの傷が治ることだけに集中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・どれくらいそうしていたのだろうか?


「・・・・・ぬし・・・・これ・・・・・主よ!! もうよい! もう大丈夫じゃ!」


『・・・はっ?! あ?』


クルカ婆様の声?


『そうだ! エオナさんの傷は?!』


「赤ちゃんさん!! 君凄いよ!」


どうしたんだ? ミルルカの声もする。

エオナさんの容態はどうなんだ?


「まさかのお、赤子がエオナの傷を全て治してしまうとわ」


あ、治ったのか?


「自己治癒は出来ていたが、まさか他人の傷を治せることが出来るとは思わなんだ」


自分でも出来るとは思っていませんでした。

出来て良かったよ。


「お婆様、赤ちゃんさんって自分の意思で治そうと思ってやったのかな?」

「どうじゃろう。やたらとエオナに手を伸ばして触れたがってはおったが・・やっぱり治そうと自分で思っていたのやもしれん」

「それじゃあ、私達の言葉とか理解しているって事?」

「考えにくい話じゃが、そうとしか思えん行動だったからの」

「・・・・・赤ちゃんさん、私の言葉を理解しているの?」


クルカ婆様の膝の上にしっかりと乗せられ、ガッチリと体を抱えられた状態の僕に、ミルルカが顔を近づけ眉間にシワを寄せた真剣な顔つきで迫ってきた。


『気味悪がられてる?』


どうする?! 素直にそうだと答えて良いのか?

いくら魔族でも赤ん坊が言葉を理解して考えられるなんて言ったら化け物扱いされないか?

ただでさえ人族で、結界を強固にするために落とされた贄なんだから。

でも、今の治癒魔法にせよ無かったことには今更出来ないよね?


『よし! 赤ん坊は度胸だ!』


僕は、大きく息を吸ってから、ゆっくりと頷いてみせた。

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