第13話 初魔法 2

『・・・・・・・・はっ!??』


気を失っていた?

どれくらい・・・・まだミルルカは走っているみたい。

という事はそれ程時間は経っていないみたいだ。

気を失っていたのは、ほんの一瞬だったのかも。

だとしたら少しは慣れたのかな?


「クルカ婆様!! エルカ母様!!」


ミルルカが大声を上げ二人の名を呼んだ。

集落に戻ってきたみたい。


「ミルルカ! 無事じゃったか?」

「はい、私は箱庭に居ましたけど、何ですか? あの音と振動は?!」


ああ、あの場所、箱庭って言うのか。


「そうか。そっちは何ともなかったか・・・そうなるとムエルの探索部隊が心配じゃ」


ムエルさん? また初めて聞く名前だ。

探索部隊という事は、集落周辺の探索調査? をしているという事だろうけど・・

クルカ婆様とエルカ母様さんの顔が険しい。

まだ状況が良く分かってないようだ。


僕達は今、集落の中心ある石造りの集会所に集まっていた。

この建造物、ギリシャとかローマとかの神殿に似た様な柱に大きな岩が乗っけられている簡単な作りの場所なんだけど、今ここに50人くらいの魔族の人が集まっていた。

皆が一応に不安そうにし、何やら話し合っていた。

こうして見ると殆どが女性だ。

男性らしい人は・・・・3人?

それも結構お歳に見える。

魔王さんの記憶から引き出すと、魔族は長寿種で平均500~600年は生きるみたい。

その上見た目の容姿は400才くらいまでは人族で言う20代くらいにしか見えないみたいだ。

なのであのお爺さんに見える魔族は400才以上、たぶん500才に近くじゃないだろうか?


「長老! エオナが戻って来ました!!」


そこへ、大声を上げ二人の人影が近づいてきた。

一人は布の簡素な服の女性と、もう一人はその女性に肩を貸してもらい足を引きずる女性。

軽装の黒い甲冑姿だが防御されていない所から血が流れ、そう浅くない怪我も多く見られかなり苦しそうだ。


「ク、クルカ長老! 救援を! 早く救援を!!」


そのエオナと呼ばれた黒い甲冑の女性が必死に声をあげた。


「どうしたのじゃ?! 何があった?!!」


クルカ婆様の言葉に、直ぐには返事が出来ないエオナさん。


「・・・っく、せ、赤竜、奈落の赤竜に遭遇して・・・」


たどたどしい言葉を必死にくみ取ろうと、クルカ婆様とエルカ母様さんが彼女の口元に耳を近づけていた。


「赤竜じゃと?! 何で今頃・・・休眠中ではなかったのか?!」


さらに聞こうとクルカ婆様はエオナさんに問い質すが、反応が薄い。

このままじゃこの人もやばいんじゃ?


「お婆様! 今はエオナの治療が先です!!」


そこにミルルカの大きな言葉が響いた。


「そうです。クルカ婆様ここはまず治療を」


エルカ母様もミルルカに同調する。


「あ、ああそうじゃな・・しかしこの傷では・・・」


そうか、魔族の人には聖属性持ちが居ないんだ。

だとすると治癒系魔法が使えないのか?


「私が組織活性の薬を持ってきます! お婆様は身体向上強化魔法をお願い! エルカ母様は救援部隊のの準備を!」


慌てる大人達をよそにミルルカがテキパキと指示を出していく。

その言葉に皆が動き出す


「分かったわ!」

「ミルルカ薬を頼むぞ!」

「はい!」


そう言って僕をクルカ婆様に預けて外に向けて走っていった。

薬を取りに行ったのだろう?

けど、床に寝させられたエオナさんの状態を見ると、素人の僕でも分るくらいの大怪我をしている。

傷口を薬草の葉や布で止血しようとするけど一向に傷口は塞がりそうにない。


「これ以上の出血は命取りになる・・・しかたない傷を焼く」


クルカ婆様の言葉に皆が一瞬強張るが次には一斉に首を小さく縦に振っていた。


傷口を焼いて出血を止めるのか・・・でも火傷の痕が体中に残る事になる。

もし生き延びれても女性としてそれは受け入れる事が出来るのだろうか?

そう思ったら僕はクルカ婆様の肩を叩いて、横になっているエオナさんを指差していた。

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