第8話 奈落の底は 3
・・・・・・・・・・・・ん・・・ん?
『ここは?』
えっと、どうしたんだっけ?
目を開けたらやっぱり岩肌の天井が見えた。
でも何だろう? 何か違和感が・・・・・・ああ、天井が凄く綺麗な平になっているんだ。
さっき見た岩肌はゴツゴツとすて荒れていたけど、ここの見える天井は人が切り出した様に綺麗に平なんだ・・・・・・え?
僕はまだボーっとしていた頭を脳が活性化するように振った。
『これ、人の手が入ってる・・・・?』
あ!? さっきの女性二人は?
そう思った瞬間、探すつもりだったのか条件反射みたいに顔を横に向けた。
「あ! 母様! 赤ちゃんさん目が覚めたよ!!」
「うぎゃあ?」
「やっぱり変な鳴き声」
「ミルルカ、違うでしょ。泣き声よ」
顔を横に向けると先程の少女の顔が僕の目と鼻の先にあったのでびっくりして変な声が出てしまった。
「あ、そうでした。えっと赤ちゃんさん腕は痛くない?」
少女は少し不安そうな顔をして僕に問いかけてきた。
「ミルルカ、赤ちゃんはまだ喋れないからね」
「え? ああそうか。まだ言葉を覚えてないのか」
「あなたもそう、私も赤ちゃんの時は皆そうなの」
「そうか、でもそうしたらどうやって謝ったらいいの?」
謝る?
ああ、そうか。この子の怪力で僕の腕は砕けて・・・・
『あ!! ぼ、僕の腕!?』
あれ? 痛くない? それにちゃんと動くみたい・・・・え? 治ってる?
「そうね、それでもちゃんと言葉にして謝りなさい。言葉は伝わらなくても気持ちは伝わるものよ」
「うん、えっと赤ちゃんさん、君の腕を砕いてごめんなさい!」
僕に向かって頭を下げるミルルカと言う少女。
黒髪に赤い瞳の美少女が僕に向かって謝っている。
誠心誠意、必死に謝ってくれているのが伝わる。
まあ、腕も何故か治ってるし、これだけちゃんと謝ってくれているんだ。
これ以上怒る必要はないよね。
僕は間近にあるミルルカの頭に砕かれて治った腕でポンポンと撫でてあげた。
「え? あ、あのうこれって?」
「ふふ、この赤ちゃんミルルカを怖がってないみたい。それどころか興味があるのね。自分から手を差し伸べてくれてる。良かったわねミルルカ。赤ちゃんに嫌われなくて」
別に嫌う理由は・・・ああ、有るか。
腕を握りつぶされたんだもんな。
でも悪気が有ったわけじゃなさそうだし、それにちゃんと謝ってくれたんだもん。
「え、あ、あの、許してくれるの?」
当たり前だと言う代わりに、また頭を撫でてあげた。
「うわあああああん!! 赤ちゃんさん! ありがとう!!」
な、泣いた?!
え、え? 何で泣くの?!
泣くのを止めたくて僕はさらに頭を撫でるのだけど・・・
「うわああああんん!!」
泣き止まない・・・そんな状態が暫く続いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「落ち着いた?」
ミルルカの母様さんがようやく泣き止んだミルルカに聞いてくる。
「う、うん。もう大丈夫」
「そう、うふふ」
母様さんが意味深に笑っている。
まあ仕方ないか。
あの後、泣きながらミルルカは僕を今度は優しく抱き上げ、自分の胸の前で抱えだしたんだ。
それからはずっと僕を離そうとしないミルルカに母様さんが意味深に笑っていた。
でもこの母様さんもかなりの美人だ。
ミルルカにやっぱり似てる。
違うのは瞳の色が碧だということ。
それにその瞳がキリッと鋭く、まだ幼さが残るミルルカと違って大人の女性といった感じだ。
「ミルルカ、ちょっと赤ちゃんの腕を見せてみて」
「あ、うん」
そう言って母様さんが僕の砕けていた方の腕を手に取りじっくりと見だした。
「・・・・・・やっぱり、もう完全に治ってるわね」
そう言った母様さんの顔は少し眉間が寄った気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます