第3話 落とされて 3

『・・・・・・・・・・・・はっ!?』


僕は、どうなった?!

死んでないのか?

でも辺りは真っ暗で・・・まさか奈落の底?

いや! そんなのありえない! 

どれだけの深さかは知らないけど、途中の壁か地面に激突し木っ端微塵に砕け散っているじゃないか?

それなのに意識がある・・・・・どう言う事?

それに何だか体がフワフワしてるんだよね?

これって浮いてるって事?

でも辺りは良く見えないというより黒い色が広がっているだけだ。


『・・・・・・・まさかこれってあの世なの?』


もしかして僕って霊魂とか幽霊とかになったの?

でもあの世ってこんなに何にも無い世界なのか?

神様とか地獄の閻魔様とかいないの?


・・・・・・・・・・


それからも色々考えるけどどうにも結論に至らなかった。


「はぁ~」

『やっぱり僕は死んだのだろうか?』


・・・・・・・あれ? 今、溜息をついたよね?

確実に息を吐いたよね!?


「スーゥ・・ハアーァ」


うん、ちゃんと息が出来る!

それに微かだけで心臓の鼓動がするじゃないか!

僕はまだ生きている!

だとしたらどういう事?

とにかく僕はなんとか動けないものかと手足をバタつかせた。


『・・!? お! 動いた・・・様な?』


辺りが真っ暗だから基準になる物がなく動いているのかはっきりとは分からないけどたぶん自分の平衡感覚が狂ってなければゆっくりと回る様に動いているはず。

これってテレビで見たスカイダイビングの時の人の動きに似てないだろうか?

実際に体験した訳じゃないから断言はできないけど、たぶんそうだと思う。

違うのは落下による風圧が全く無い事だ。

つまり最初に投げられた時の様な落下はしていない事になる。


『空中に浮いているの?』


想像するとなんだか滑稽に思えてきた。

赤ん坊の姿で空中を漂ってる姿・・・・・・・


『異様だな』


まあ、それは置いといて先ずは直ぐには死なないみたい。

だけど、これじゃあ何の解決にもなっていない。

辺りが暗いのは、陽の光が届かない程の地下深くまで来ているからかもしれない。

それじゃあ誰かに遭遇することなんてありえない。

赤ん坊の姿であと何日もつ? 

そんなの食べる物も飲む物もないのに数日だってもつわけがない。


『くそ~!! こんな誰も居ない世界で生殺しなんてあるのか!!? 神様がいるならちょっと出て来い!! クレーム入れてやる!!』


と、心の中で怒ってみてもどうしようもないか・・・・・・


『誰か・・どうにかしてよ・・・』


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし! どうにかしようじゃないか!』


・・・? 今、何か言った?

僕じゃないよね?


『そうだ! 君じゃない! 私はプリムスロード、魔王だった者だ』

『・・・・・ダメだ。幻聴がする。それとも精神崩壊で二重人格を発症してしまったのか?』

『違う、違う! 今、君に語りかけているのは正真正銘の元魔王、プリムスロードだ!』

『・・・・・一つ聞いて良いですか?』

『おお、何でも聞いてくれ!』

『痛い人ですか?』

『それは何だ? 私は別に怪我などしてないぞ?』


この反応、中なんとかを発揮している人じゃなさそうだけど・・・どこから話しかけているんだ?

僕は辺りを見廻したけど、相変わらずの黒い世界だけで近くに人の気配を感じない。


『違う、違う、周りには居らんよ。中を見よ。身体の中だ』


身体の中?

何を・・・・あれ? 僕の体の中にさっきまでは感じなかった何かが、ある?

何だこれ?


『おお! 判るかね? それが私だよ』

『は?』

『不思議に思うのも無理はない。私は今、君の体の中に在って、君の魂と同化しようとしている魔王プリムスロードだった魂だ』


なるほど、魂か。

なら話は分かる・・・・・って!


『おい! それって僕の体に憑依したってこと?!』

『正解だ!』

『何が、正解だ! ですか!!』


今度は体を乗っ取られるとは・・・・・

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