第2話 落とされて 2
そう心の中で叫んでみたものの誰かが答えてくれるわけがなかった。
唯一希望があるとすれば、さっきからファンタジー映画やアニメで出て来る様なセリフを言っていたオッサンだ。
そのオッサンに聞いてみる?
でもただの誘拐ならそいつが犯人なわけで・・・・それは無いか。
オッサンが犯人なら外で映画のセリフを声高らかに叫ぶなんて状況、有り得ないでしょ?
せれに、どう見ても僕の住んでいたアパートの近くではないのは確かなんだ。
なら、やっぱりこれって・・・・
一抹の不安が頭を
『ええ~い!!!』
どのみちこのままじゃ幸せな結末とはいかなそうだし・・・オッサンに話しかけてみよう!
『おい! おっさん!!』
「ぎゃ! ぎゃあん!!」
あれ?
『おい! 話を聞かせてくれ!!』
「ぎゃ! ぎゃあうあぎゃあ!!」
あれれ?
自分では喋っているつもりなのに「ぎゃあ、ぎゃあ!」としか言えない。
まるで赤ん坊じゃないか?
「ふん! うるさい赤子だ!」
「王よ! 今、その子は王の子として人類の厄災を防ぐ盾として捧げられる身ですので、言葉に気をつけてくだされ」
「お、おおそうだったな。英雄王の我の子にしてやったのだったな」
「はい、儀式が終わるまでは御辛抱を」
「うむ」
今の話・・・赤子って、赤ん坊の事だよね? 大学生の僕が赤ん坊?
しかも、人類の厄災? 盾? 捧げられる? 儀式?
これってやっぱり、そうとしか思えない・・・
それならさっきの言葉は・・・何一つポジティブに考えられる要素のない単語!
それらを全てまとめると、ある一つの解答が導き出される。
『異世界転生・・・・・』
「おい、宰相」
「は!」
「いつまでこうして赤子を持っていなくてはならぬ? 手が疲れたぞ」
「は、申し訳ございません。神殿の司祭から合図があるまでは御辛抱を」
「しかしなあ、手が痺れて・・・もう落としても良いか?」
「ですので、もう暫くお待ちください」
おい! こら! 今何て言った!
落として良いかだって?
何処に?
決まっている。
この眼下に広がる大きな穴にだ!
深いって言うもんじゃない。
下が見えない。
こんなに良い天気で穴のかなり奥まで照らしているというのに、その中心は深く、光が届かない程に暗かった。
「魔物の巣食う奈落の世界よ! 英雄王の血を継ぐ子を礎とし漏れ出る厄災を食い止める盾とする!」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」
な、何だ?! もの凄い歓声が頭に響いて来る!
「王よ、司祭から合図の言葉がおりましたので、もうよろしいですよ」
「おお! そうか、では投げ込むぞ!」
『おい! ちょ、ちょっと待て! おい! おい!! 聞こえないのか?!』
「ぎゃ! ぎょ、ぎょっあまあ! ぎゅ! ぎょ!! ぎゃいうぇにゃ?!」
しまったあ!! 赤ちゃん言葉しか喋れない!!
「なんだこの赤子は! うるさいではないか! さっさと奈落の底に落ちてしまえ!!」
上に持ち上がったと思った瞬間、反動をつけられて下へ投げ出されてしまった。
『うわ!! おい! こらあああああ!! 死んだら絶対に呪ってやる!!!!!!!!」
「ぎゃ!! ぎょ! ぎょおああああ!! ぎゃんあぎゃあっきゃりゅ!!!!!!!!」
一瞬の浮遊感・・・からの・・・
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
堕ちるぅううううううう!
か、体がグルグルと回る。
頬に当たる風の勢いが半端ない!
しかもドンドン速度が上がって・・・き、気持ち悪・・・だ、だめ・だ・
意識・・が・・・・・
遠のく意識の中、チラチラと見える大穴が地獄の入り口に見えてくる。
『転生していきなり奈落へ直行なんて!!!』
こんな・・・あり・・・・・かよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おめでとうございます国王陛下。100年に一度の魔界封印の儀式が完了いたしました」
「そうか、いやあ案外肩が凝るものだな」
「これで英雄王の名が世界にまた轟きます」
「そうか!? それならば良い! しかし100年後の子孫に伝えなければならん」
「はっ、何をでございますか?」
「赤子の喉はあらかじめ切っておく事を進めるとな。うるさくてかなわん」
「はっ、伝書に
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