氷牢の不死鳥
mill
第1話
吹雪の中佇む建造物。
まるでガラスでできた氷の城。
この世界に生物がいないのではと思う程。
人気も獣の気配さえない場。
降る雪に音も吸収され、無音。
その中の玉座辺りに椅子の代わりに雪山が一盛り。
そこから美しい真っ白な鳳が這い現れた。
——かはっ、はぁッッ!!はぁ……
雪の灰の山の中から這い出て来た鳥。
それはだんだん人の形を形成していく。
氷柱のように美しく時折光で虹色に輝く髪となり
喘ぐ息はキラキラと輝く。
「また、死んだのか……」
呼吸がある程度落ち着いた頃呟いた。
その辺に落ちていた布を腰に巻く。寒さは感じないようで、時折舞散る雪をものともせず歩き出した。
歩くたび、床の氷に足の皮が張り付くが、痛みもせず、いつの間にか肌は綺麗になっていた。
ここには彼以外誰もいないようで少し破損はあれど彼が腕を振るたび氷によって修復されていく。
——よし、こんなものか
と、壁や廊下を修復していく。そうして下の階への階段を進んでいった。
下はホール状の大広間で、王は昔ここで様々な者と対談、あるいは騎士たちを鼓舞、表彰していたことが伺えた。
今はその面影もなく、生きた人の代わりに様々な仕草をする生きた人間のように精巧な男女の像が無造作に散りばめられていた。
その一角、バーカウンターが内装気にせず佇んでいた。
その中の酒瓶を一掴みして、がぶ飲みする。
––––また、一年過ごせなかったな……
男は春夏秋冬一年、冬の季節まで生きることがなかった。
だから、ここの周りも綺麗だと聞くが茜色の景色を見たことがない。大体この灰色。
——不死なせいか、疎くなっているのだな
油断禁物だな
少しばかりの悔しさを噛み締めている所、炎玉が飛んできて、その炎で文字を空中に書き出す。
『山奥の村にて、嵐の被害あり
魔石の暴発の可能性あり
追って調査すべし』
男は人外であるものの、身元を隠してギルドに加入していた。それもただ生活のため。
そのギルドは、国のお偉い方が「情報収集のため」と運営していて、男の素性も分かった上で依頼をこのように飛ばしていた。
「人使いの荒い……」
と、そのギルド長をなじりながら適当な服を探して着る。
寒さも感じないので、薄手のもの。昔、東の火の竜の国で良く着られていた黒の和服——側からみれば喪服を着ていた。
己のためか、それとも周りの通常の寿命を敬ってか……彼もいつの間にかそうなったので覚えてはいない。
しかし、この真っ白な世界に墨を垂らすように確かな存在感が生まれた。
「よし」
と、吹雪が止んだのを見計らって白銀の世界に降り立つた。
——おそらく到着は春か
雪散る季節より桜の舞った景色の方が良い
特に場所はそれの多く植えられていると聞くし……
と、先の事を楽しみにしながら、そして
今回こそはあの人を……
想い人を想像して扉を開けた。
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