第40話 vsサキュバス②
「ふふふふふ、いいわぁ。その顔、凄くいいわよ」
サキュバスの勝ち誇った嘲笑が響く。
その笑い声を聞いていると、ふつふつと腹の底から怒りが湧き上がって来た。
アバター。
爆炎を9発頼む。
≪どうするつもりですか?≫
オメガパワー。
30秒間の間、身体能力を100%上昇させてくれる強力なアクティブスキル。
かつてリリーを倒す際、3つ同時に使用したスキルだ。
≪オメガパワーは使用するとアドレナリンが大量に噴出され、極度の興奮状態になってしまいます。そんな物を複数同時に使えば、精神に大きな影響が出る可能性が≫
わかってる。
だが今の状態じゃ、24体も同時に相手するのは無理だ。
このままじゃどうせ死ぬ。
だから……
例え精神に影響が出ようとも、オメガパワーの効果時間30秒で24体全て始末する。
≪……分かりました。ですがオメガパワーを9つ使用するよりも、身体超強化を4つ残した方がミスターの能力はより大きく向上します。ですので、オメガパワーは5つでいきましょう。それならば精神への影響もぎりぎりの範囲で収められるはず≫
何故上昇率の高いオメガパワーだけで固めるより、身体超強化を残した方が強くなるのかは分からないが。アバターが言うのなら間違いないのだろう。
まあもし生き延びられたなら、説明はその時聞くとしよう。
俺は身体超強化5つを炎の魔法に変え、炎皇剣に吸収させる。
代わりに剣から生み出された爆炎をスキルに変えて体内へと取り込んだ。
「あら?諦めないのね?」
絶望して諦めようとしない俺の事が不可解なのか。
それまで楽し気に笑っていたサキュバス達の表情が真顔に変わる。
「これからお前を倒すってのに、一体何に絶望するってんだ」
俺は不敵に笑い、炎刃を纏った炎皇剣を構えた。
「ふうん。まだ何かあるって訳ね。いいわ、遊んで――」
言葉を待たずに突っ込み。
そしてオメガパワーを発動させる。
体の底から力が、そして抑えきれない爆発的な感情が湧き上がって来る。
視界がちかちかと明滅し、俺は雄叫びを上げてサキュバスへと斬りかかる。
「おおおおぉぉぉぉぉ!!!」
一匹目を真っ二つにしたところで俺の意識は限界を迎え。
そして本能の赴くままに、体だけが暴れだす。
◇ ◇ ◇ ◇
「!!」
炎皇剣を受けたサキュバスの体が真っ二つになり、驚愕の表情を浮かべたまま消滅する。
勇人はそのまま横に居るもう一体の首を薙ぎ、その頭を飛ばす。
圧倒的な彼の戦闘力を目の当たりにしたサキュバス達が、そこでやっと一斉に動き出した。
だが遅い。
勇人はさらに傍にいた2体を切り伏せ、雄叫びを上げる。
「おおおおおおおおおお!!」
「調子に乗るな!」
サキュバス達が転移で死角――背後や上空――から一斉に、雄叫びを上げる勇人へと躍りかかる。
だが彼女たちの攻撃を受けても勇人はびくともしない。
「な!?」
サキュバス達は決して非力などではない。
その攻撃には魔力が籠り、容易く人を引き裂き、骨を砕く。
だが今の勇人には一切通用しない。
それ程までに、スキルで強化された今の勇人の肉体は強靭だった。
だからオートガードも発動しなかったのだ。
そしてわざわざ自分から剣の間合いに飛び込んできたサキュバス達は、勇人にとってこれ以上ない御馳走である。
首が、体が、腕や足が、剣を振る度容赦なく切り飛ばされ。
サキュバス達は次々と消滅していく。
最後の一体が崩れ落ちた。
ジャスト30秒。
そこで勇人の動きは止まる。
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