第39話 vsサキュバス①

「ぐぁっ!」


腕に衝撃が走り、体が吹き飛ぶ。

そのまま俺の体勢は崩れ地面に倒れ込んだ。

体がそれほど痛まないのは、オートガードが咄嗟に受け身を取ってくれたからだろう。


「くそが!」


悪態をつきながら起き上がり、閉じていた瞼を開ける。

そして目が合う。


サキュバスと。

いや、サキュバス達と。


1、2、3……くそっ12体も居やがる。

さっきアバターに確認した時は9体だった。

そこから更に3体増えてやがる。


「どうしたの?もっと楽しみましょうよ」


サキュバスの1体が自らのプロポーションを手でなぞり、扇情的な動きで俺を挑発してくる。

普段なら半裸の女にそんな真似をされたら、完全に鼻の下を伸ばしきっているところだろう。


だが……


≪この状況下でそれが出来たら、大物です≫


だよなぁ。

流石に命のやり取り。

しかも相手の数がどんどん増えていってる状態じゃあ、とてもそんな気分にはなれない。


ああ、逃げ出してぇ……

アバターに炎皇剣から魔法を出して貰って、それをスキルに変えるまでは良かったんだがなぁ……


そう思わず心の中でぼやく。


等価交換は、自分が生み出した魔法にも当然適応される。

それを利用し、俺は炎皇剣で生み出した魔法を変換して身体能力を強化した。


身体強化、Ⅾランク(20%アップ)×9を身体超強化Bランク(50%アップ)×9に変えた事で、俺の身体能力は2倍以上に跳ね上がっている。


実際その効果はてきめんで、オートガードとアバターの指示を合わせる事で最初の一体目は瞬殺。

その後、4匹同時ぐらいまでなら全く問題なく戦う事も出来た。


だが倒しても倒しても相手の数は減る所かどんどん増えていき、今やサキュバスの数は12体まで増えてしまっている。

とてもではないが、相手しきれない。


≪ここが踏ん張りどころです。相手も同時に動かせる体の数は限られている筈。流石にこれ以上は増える事は無いでしょう≫


そう願うよ。

今でもぎりぎりいっぱいいっぱいだ。

これ以上増えたら、冗談抜きでゲームオーバーになる。


とにかく、今は相手を一体一体確実に潰していこう。

相手の魔力が無尽蔵ではない以上、生成できる体の数には限りがあるはずだ。


幸いな事に、オートガードによる回避には一切体力を消耗しない。

更に天使の施しには体力回復効果もある。

ガス欠する事が無い分、長期戦に関しては間違いなく此方の方が有利だ。


まあ、即死さえしなければの話ではあるが。

そこはオートガードを信じるとしよう。


「その眼。まだまだ諦めてないみたいね。そうこなくっちゃ。で、も――」


サキュバスが楽しそうにへその辺りを撫でる。

すると撫でた辺りから手が突き出し、新たなサキュバスが姿を現した。

それも12体全部から。


うそ……だろ……


「これでどうかしら」


悪戯っぽく笑う24体のサキュバス達を前にして、俺は呆然と立ち尽くす。

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