微熱がずっと止まらなくて
華麗
第1話
ーー微熱ーー
|田中晴海(たなかはるみ)くんと私は家がお向かい同士の幼馴染。
私と晴海くんとは小学校から家族ぐるみで仲が良かったこともあり、小学校の間は決まって毎週土曜日になると、両親が共働きしている晴海くんは早朝から私の家に預けられ泊まりに来ていたので、低学年の頃までは一緒にお風呂に入ったりもしたし、一つの布団に二人で寝たこともある仲だった。
だから家でも学校でもいつも一緒にいて、何だか空気のような··········何時も傍にいるのが当たり前に思える本当の家族みたいな存在で。
そんな晴海くんとはベタベタしてようが、私の着替姿をえを見られようが私には家族のような存在だったから特に何も気にならなくて、それは大人の女性として胸も膨らみが出てきて成長してからも同じで、高学年を過ぎてからですら一切の恥じらいもないままそれは高校生になってからも同じことだった。
六月の初めに高校の中間テストが行われるので、そのテスト勉強を一緒にしようと思い、放課後晴海くんの家に遊びに行った時のことだった。
「あら、こんにちは由奈ちゃん。 晴海ったら買い物行く用事があるって出掛けちゃって今はいないんだけど、直ぐ戻って来ると思うから晴海のお部屋で待っててあげて!」
普通、女の子を息子の部屋に通したりしないのだろうが、私は幼馴染というポジションにいるからなのか、玄関のチャイムを鳴らすとお母さんがインターホン越しに確認しただけで、顔パスのように玄関のドアを開けてくれるし、とあっさり晴海くんの部屋に通して貰えてしまう。
久しぶりに入った晴海くんの部屋は、男子にしては案外綺麗に整理整頓されていて、服等がごちゃごちゃ散らばっていることはなく感心する程。
部屋を勝手に物色していると、クローゼットの中に気心地の良さそうな私服を発見してしまい、私は晴海くんの洋服を勝手に拝借することして、自分の洋服を脱ぎ捨て下着姿になったところに、丁度晴海くんが戻ってきたのだった。
「な、何だよ
「うん、そうだけど、駄目だった!?」
「駄目に決まってんだろ、見ないように後ろ向いてるから、早く着替えてくれる」
「う、うん」
(もーう、別に減るもんじゃないんだから見ても良いのにな··········)
すっごく照れまくり身体が火照っててアワアワしてる晴海くんが何だか可愛く見えて仕方が無い。
「もういいよ!」
そう言うと照れたままの晴海くんがこっちを振り向く。
「げっ、それって僕の洋服…………部屋着ですけど…………」
「……駄目だった?」
「駄目ってわけじゃないけど…………」
「じゃないけど!?」
「まあ、その、可愛いし…………」
「えっ、今なんて言ったの?」
「あ、えっと……由奈が可愛いなって……あのさ、僕達付き合わない!?」
「……」
「急だよね、ごめん」
☆
中学一年生の頃、突然晴海くんから告白された私は、戸惑って直ぐには何も言えず、でもそれが嬉しくて直ぐ言葉に出来ないのならとニコッと微笑み見返した後、暫くしてからこくりと頷きひとつ返事で彼と付き合うことに。
今までは幼馴染として一緒に映画館に行ったり、ゲームセンターやカラオケにも行っていたけど、付き合うことになってからはカップルシートで映画を見たり、マンガ喫茶でペアシートにしたり、何かとペアのものを利用するようになった。
ところが晴海くんとは一年の夏休み前に小さな事で喧嘩したっきり、離れてしまうことに。
仲直りしたかったのにする間もなく、夏休みに突入すると急なお父さんの転勤が決まり引っ越してしまったので、それっきり会うことも無く。
··········自然消滅という形で今に至るのだった。
ところが高校の入学式で私は晴海くんと再開することになる。
クラスも一緒になった私は、晴海くんの元へ行き挨拶をした。
「こんにちは、久しぶりだね晴海くん、私は幼なじみの
ところが、自分の名前を名乗った後、急に目の前がふらふらになり··········気が付けば私は保健室のベッドにいる。
(あれ? あれれ、私、ど、どうしちゃったの?)
周りを見渡すと、ベッドの直ぐ横に置いてある椅子に腰掛け、私のベッドの隅で交差した腕に顔をうつ伏せにして寝ている晴海くんの姿が目に入った。
(もしかして晴海くんが連れてきてくれたのかな?)
そう思って晴海くんの頭を撫でてると、ふぁーっと欠伸をしながら晴海くんが目を覚ました。
「あ、えっと、その由奈久しぶりだね。 ってか、いきなり倒れるんだもんびっくりしたんだからな、微熱程度だったから良かったけど、もしかして、未だ怒ってる?」
「べ、別にもう何とも思ってないけど··········」
「ところで、熱下がったのか!?」
そう言いながら私のおでこと晴海くんのおでこをくっつけてきた。
いきなり過ぎて心臓がドキドキして心拍があがった私は、身体中が火照り出す。
「おっと、未だ熱っぽいじゃん!!」
寝とかないと駄目だぞって布団を掛けられる私。
晴海くんは喧嘩する前の、付き合っていた頃のように優しかった。
「先生呼んでくるからな!」
「だ、大丈夫だよ··········これは違うの、もう熱下がってるから、えへへ!!」
そう言ったけど、晴海くんは行ってしまった。
それから暫くして保健の先生が来てくれて体温を測ると正常に戻っている。
「良かった!!」
晴海くんはそう言った。
その後、先生が職員室に戻り、私達も家に帰ることになった。
ところが、二人きりになったせいでまたドキドキが増して心拍が上がった私は、身体中が火照りだし··········。
「ん!? また顔が火照ってきてるぞ!!」
そう言うと、またおでこ同士をくっつけて確認された。
「まぁ大丈夫かな、でも心配だから家まで送るよ」
その道のり、晴海くんは中学の時喧嘩の原因ともなった、私の鞄に付いていたお気に入りのうさ
ぎのキーホルダーを自分のバックから取り出すと、私の手の平にポンと··········。
「ごめん、黙って盗んだりして··········」
「いいって、もう気にしていないから」
「ううん、由奈が良くても僕はずっと由奈のこと
気にしてたよ、盗んだのは引っ越しするのが分かって、由奈と離れるのが寂しかったからなんだ!! あの、また僕と付き合ってくれますか?」
再会してからすぐの告白··········二度目は無いと思っていたのに··········嬉しかった。
「はい、喜んで!!」
そう答える私は、またドキドキが増して··········。
「あ、あれれ、由奈の熱上がってるのかな··········」
あわあわしながら、晴海くんが心配してくれている。
(えへへ、さっきから私の身体が火照ってるのは微熱じゃ無いよ)
「晴海くん心配してくれてありがとう」
「家帰ったら早く寝ろよな」
「うん!」
微熱がずっと止まらなくて 華麗 @taikorin
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