赤志-11
廊下に出るとエレベーターホールから足音が聞こえた。
「いたぞ!!」
武装したドクロマスクを被る暴徒が走ってきた。
反対側の、避難階段へ繋がるドアからも同じような連中がなだれ込み挟まれる形になる。
「誰かいるぞ!」
「構わねぇ! 藍島以外はぶっ殺しちまえ!!」
ドクロマスクを突き抜けて声が聞こえてくる。
「ジニア、後ろは任せた」
「わかった!」
ジニアはキャスケットを深く被り、赤志もまたフードを深く被ると、それぞれ駆け出した。
「うぉらぁあ!!」
ドクロマスクが金属バットを振り被った。
槍でもない長物を使う時、素人は必ず振り被る。
身を屈め懐に入ると、素早く相手の胸部に掌底を当てる。打たれた相手が吹き飛んだ。
倒れた相手の胸部分は大きく凹んでいた。マスクの口部分が血に染まり痙攣し始める。およそ人間がつけたとは思えない怪我を見た暴徒は足を止め当惑する。
「死んでも恨むなよ」
一番近くにいた相手の腹を蹴飛ばす。
目を向けた暴徒の頬を
「次だ」
跳躍し次の暴徒に膝蹴りを浴びせる。着地後、他の暴徒の腹に右フックを叩き込む。後ろ回し蹴りを別の者に当て、流れるように裏拳を放つと、敵がもんどりうって倒れた。
「くそ、クソがっ!!」
別の暴徒がナイフを突き出してきた。
半身になり攻撃をいなすと
暴徒は悲鳴も上げず仰向けに倒れた。ナイフが床に落ちる。
「来いよ」
バットを握る者に対して言う。震えあがっており、呼吸が荒い。
赤志はバットを手で払い股間を蹴り上げる。内股になり、前のめりに倒れる相手の頭を掴み、膝を顔面に叩き込む。
3度目を叩き込むと雑に放り捨てた。
「そのマスクよりも醜い
倒れた相手の顔を何度も踏みつける。数人の暴徒は悲鳴を上げ、逃げ始めた。
ジニアの方も似たような状況だった。数人が床に倒れたところで、相手の勢いがなくなっていた。
「こ、このガキ!!」
無骨なハイキックを屈んでやりすごし、ジニアは軸足を思いっきり蹴った。振り抜けると、暴徒の膝から先が、曲がってはいけない方に曲がった。
「ぎゃぁああああああああ!!」
男の野太い悲鳴に他の暴徒たちが慌て始める。
「おい、なんだよこいつ!」
「獣人じゃねぇか!! ふざけんな!」
ジニアは跳躍すると片足を天に向ける。
そのまま落とし、踵を敵の鎖骨に叩き込んだ。
「ひがっ!!?」
悲鳴を上げ両膝を折った相手の側頭部を蹴り飛ばす。ぐしゃっという音が鳴り響き相手がゴトリと倒れる。
「次は?」
冷たい声を放つと暴徒は武器を捨て逃げ出し始めた。
「割に合わねぇ! こんなん! 獣人が守ってるなんて聞いてねぇぞ!!」
ジニアは逃げる者を追わず赤志の方を確認する。
向こうにいた暴徒は地に伏すか壁を背に座り込んでいた。後悔と痛みの呻き声が漏れている。
まだ意識がある敵のマスクをはがす。出てきたのは予想外なことに女だった。
「身体強化魔法を使ってるな。誰から教わった?」
相手の体内魔力は非常に少なかった。
【身体強化の魔法は基礎だが見る限り、無理やり発動しているな】
「トリプルMか」
薬物の名を出すと相手はしぶしぶ頷いた。
「誰から貰った」
「し、知らない。「グリモワール」は全員持ってて余りを貰った」
舌打ちし相手の顔面を殴る。相手の鼻から血が吹き出す。悲痛な声が廊下に響く。
「ひ、酷い……」
「何がだよ」
「女、女の子なのに」
「金属バットやらで襲い掛かってきてるくせに今更性別を盾にするな。卑怯者が」
地面に顔面を叩きつけた。
「獣に劣るぜクソ女」
頭に向かって唾を吐く。怯えた瞳で藍島が周囲を見渡す。
「こ、殺しちゃったの?」
「全員生きてるよ。ジニアもお疲れ。やっぱお前強いな」
「え、え? そうかな……えへへ」
照れくさそうに、血塗られた手で頬を掻いた。
藍島が顔を引きつらせる。
「とりあえず移動しましょう。1階まで行きます」
「はい!」
「わ、わかった」
赤志たちは階段へと向かった。
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