第47話
連邦国家で新たに設けられた従属制に参加する国が現れたことは、他の国に衝撃を与えた。
連邦国家に参加する64ヶ国。
参加理由は国それぞれではあるが、ジバの持つ知識で国を繁栄させたい、邪神の復活に伴う今後の脅威を何とかして欲しいの2点については全ての国共通である。
そして何よりも大きいのは、ほとんどの国が連邦国家に参加することになり、乗り遅れた場合のリスクを感じたからであった。
結局、自国のことしか考えていないのである。
しかし、連邦議会に参加している前途有望な若者達にそんな打算は無い。
全くないかと言えば嘘になるのだが、彼等はジバに憧れ、ジバの理想とする幸福な国を創ることを第一に考えているのだ。
だから従属制による参加国の足並み揃えについて、彼等は諸手を上げて賛成したのだった。
だが彼等も国の代表者、その実現に向けて動き出すうえで面倒になるのが誰かを良く弁えていた。
自国をどういうふうに従属制に導くかを模索していた時、早々と従属制に参加を表明した国が現れたのだ。
国を代表する外交官である若者達は、その国を褒めたたえ、新たに参加した第1王子、いや即位したばかりの新王を嬉々として仲間に迎えた。
大変だったのは、新王に外交官の地位を奪われた若者である。
奪われたというよりは、新たな職に変わっただけなのだが。
彼の新しい仕事は『親善大使』
今回の王による粛清と従属制に参加した経緯を各国を歴訪して説明する役割である。
休憩室で友とお茶を楽しんでいたひとりの若者が、従属制への各国へ自国の状況を説明し、参加を促進することになったのだった。
「ジバ様、従属制を採る国が増えてきましたわ」
「そうだね、やはり大国の2国ギランシア帝国とアズバン王国が参加してくれたことが大きいな。
ソフィアには頭が上がらんな」
「おいおい、俺も忘れてもらっちゃ困るよ」
「うん?..ラファエル王じゃないですか!この度は従属制に参加有難うございました。
王が、押し切って下さったのですね」
「ハハハ、俺もラファエルって呼んで欲しいんだけど....まあ、即位しちゃったから立場的に難しいか。
でも、せっかくこっちに出向いて来れるようになったんだから、仲良く頼むよ。ハハハハハ」
「こちらこそよろしく」
「ラファエル様、よろしくお願いしますわ」
「ソフィア嬢もよろしくな」
強大な2国が参加してくれたことにより、従属制を採る国が過半数を占めるようになった。
ラファエル王子のように皇太子が即位して連邦国家の運営にあたるようになり、前王が大公として内政を見る形を採る国が多かった。
外交官の人数も元の各国1名であったのが、王と含め2名に見直される。
そういえば『親善大使』職として他国を歴訪していた彼もようやくお役御免になり、外交官として戻ってきたと聞いたな。
王は基本的に非常駐で、議会の開催や個別案件の調整時にこちらに来ることになった。
元々外交官をしていた者がそのまま王に即位するケースも相当数あり、外交官時代の仲間意識がそのまま国同士の親交に繋がったのは何よりも嬉しい誤算でもあった。
連邦議会での意思決定も早くなったが、反面、これまで外交官同士での忖度が薄まり、国同士の利害がぶつかりあう事態も増えてきているのも確かだ。
だがこれもジバにとっては計算通りである。
既に残された時間は40数年。この短い時間で全世界の民を幸せにするためには国家間の暗躍の駆け引きなどしている暇はない。
議会の場で堂々と意見をぶつけ合って解決してもらうのが早いのだ。
いくら大きな括りで世界の仕組みを変えたところで、何百年、何千年と積もった国同士の感情など一朝一夕に改善されるわけがない。
国のトップ同士が親密に新たな感情を作っていくしかないのである。
まだまだ、自国のみに拘る国は多い。
だが、それらの国においてもそれぞれの外交官、そう若い次世代の国の中心人物達が、この連邦会議の場で親交を深め合い、世界を良くするための方策を議論し合ってくれればそれで良かったのである。
山裾から顔を覗かせた朝日が眩しく感じる頃、白熱した議論を終えて各外交官が休憩室へと移動する中、ジバ達はベランダへと出てきた。
ジバの他にはソフィア、ラファエル、キャスバル、そしてギランシア帝国の若き王でソフィアの弟であるブラン皇帝がそこにいた。
次代のエルザイム世代を担う若き5人が朝日を浴びる姿は、神々しく見えたのではなかろうか。
第1部完
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いつもお読み頂き有難うございます。
昏睡の魔王【王子は夢と現実で無双する】ですが、私的な都合で一旦ここで終了とさせていただきます。
また、再開することがあるかもしれませんが、勝手な都合で申し訳ありません。
昏睡の魔王【王子は夢と現実で無双する】 まーくん @maa-kun
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