第41話
連邦国家。
自治権を持った独立国がそれぞれ協調し、それぞれの国から集められた外交官による連邦議会にて決められる総意により、加盟国全体が向かうべき道筋が決定される。
現代の地球で言えば、EUや国連に近いものだろう。
いや、常任理事国のような無意味で強力な発言権を持つような国連とは違うな。
国の大小による発言権の多少の差はあれど、そのような強権を持つ国は存在しないのだから。
そして外交官同士は争わないのがルール。
もちろん馬鹿馬鹿しいロビー活動なんてご法度である。
国を代表しているのはもちろんだが、それ以前にこのエグザイム世界の未来を第一に考える者しか、この議会に参加出来ないことになっている。
最初の連邦議会からおおよそ2ヶ月経つのだが、既に外交官が3名罷免になり交代している。
彼らは自国に戻されたが、恐らく針の筵であろう。
「早くも3名の脱落者が出ましたね。
思ったよりも少なかったですの」
「ソフィア嬢、それだけ各国の王が真剣に取り組んでいる証と思いましょう」
「ジバ様、そんなこと仰って良いのですの。
わたしにはジバ様の描かれたシナリオ通りの展開に見えましたけど」
「ハハハ、ソフィア嬢には隠し事が出来ませんね。
元々、あの3人は外交官審査の際にギリギリ及第点だったのです。
まぁ、罷免する時には、少しだけ芝居をしましたが。
でも、良いデモンストレーションになったと思いませんか?」
「やっぱりですの。でも、ジバ様の演技迫真でしたわ。
余りにも厳しさが自然過ぎて、ジバ様が二重人格かと錯覚しましたもの」
「ハハハ、少しやり過ぎましたかね。
いや申し訳ない。
怖がらせてしまったのなら謝ります」
「ではジバ様、お詫びとして、次の休みにはまた美味しい店に案内して下さいね」
「はい、姫君。承知しました。ハハハハハハ」
「ハハハハハハ」
すっかり打ち解けた2人である。
ソフィアの祖国ギランシア帝国からは別の外交官が派遣されていた。
外交官としてのソフィアが連邦議会議長のジバと親密な関係になるのは如何なるものかとの意見が出たためである。
そんなこともあり、ソフィアはジバの秘書的な役割となっているのだ。
まぁ外交官の間では、暗黙の了解でフィアンセという扱いになっていたのだが。
当然、こういうことに疎いジバは知る由もない。
しかしながら、連邦議会の中でソフィアの存在は必要不可欠なものになっているのも事実だった。
自国の利益を無視して、ジバの目指す世界全体の繁栄を第一に考えるソフィア。
そして、彼女の柔らかな物腰や話し方は、ともすれば白熱する議会を冷静に戻す役割として今や必要不可欠なものである。
ジバの知識や戦略的発想は確かに卓越したものがあるのだが、まだまだ各国の外交官の理解が及ぶところには程遠い。
その中間で間を取り持っているのもソフィアの役割の1つであった。
「ジバ様!緊急の連絡がフレシオ王国から入電しています!」
ジバが携帯電話を模して作った魔道具を使って、フレシオ王国の国王から入電があったという。
「もしもし、おお!ジバ殿か!今我が国は竜の大群に襲われておるのだ!
なんとかならぬ...プチッ ツー...ツー...ツー...」
途中で途切れた通話。一刻を争う事態のようである。
今ジバがいるアウストラ王国からフレシオ王国までは早馬を使っても2日は掛かる。
これから軍を編成して行動を起こしたとしても、とても間に合わないだろう。
「ジバ様」
「ソフィア嬢、事は一刻を争うようだ。わたしひとりで先行する。なに、心配はいらないさ。
皆さん、フレシオ王国が竜の大群に襲われているようです。
人命救助を含め、各国に軍の派遣を要請します。わたしは一足先にあちらに向かいます。
兄上、我が国の軍の派遣お願いします」
「わかった、気をつけろよ」
「はい、では!」
俺は愛馬の赤兎馬に跨り、一路フレシオ王国へと駆けだした。
赤兎馬。呂布奉先の愛馬であり、後に関羽の愛馬ともなった駿馬である。
もちろん、彼等が跨った実際の馬では無いが、その肌は赤く、異常に大きな体躯はかの赤兎馬を彷彿させるものだ。
実際は馬ではなく、アウストラ王国の魔の森深くに住む神獣である。
何者にも臣従しない彼は、孤高の存在であったが、偶然知り合ったジバと心を通わせ、こうしてジバの愛馬となったのだ。
「赤兎馬!走るぞ!」「ヒヒーーーン!」
一路フレシオ王国へひた走るジバ達であった。
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