連邦国家のあり方

第38話

連邦議会は大きく5つの部会によって形成されている。


1つ目は政策について。


ジバが持つ異世界の政治体制を学び、それぞれの長短を分析・比較しながら、今後長期的に進めていく政策手法を纏めていくのである。


2つ目は主食の専売制について。


争いの種となる最大の原因として貧富の差がある。

国の地域性によって全く無くすことは難しいが、最低限の食料を全ての者が入手できる体制作りは必要である。


この理想に向かって進むために、先ずは主食となる食糧を連邦議会の専売とし、加盟各国の全ての住人に安定した価格で配れるようにすることが目的である。


3つ目は国の統廃合について。


1国で食料生産、工業生産、原料調達が潤沢に賄えれば問題無いのだが、実際にはそんな国はほとんどない。


だが、いくつかの国を纏めることにより、食料生産、工業生産、原料調達が可能となるはずだ。


また、国同士の規模も可能な限り同等にしていく事で、国力の多少によるパワーバランスも軽減することが出来るだろう。


4つ目は教育について。


長期的な平和を齎すには、ひとりの強力な指導者が存在するだけではだめだ。


平等に同じ教育を受けた者の中で真に指導者に相応しい者が集まって議会を運営する形が必要なのである。


そのためには、義務教育制度を作ることと、教育内容の精査が必要となる。


5つ目は各国の安定について。


連邦国家とは言え、全てを連邦議会で決めてしまっては、地域毎の問題点や天変地異発生時などに対処できない脆弱な体制となってしまう。


各国はそれぞれしっかりとした自治体制を構築して、他の国々と豊かさを争うべきであるのだ。


そのための地方自治に対する施策方針を作っていく必要がある。





「ジバ様、この連邦国家というものは素晴らしい考えだと思いますの。これも神の世界で見てこられたものですの?」


64ヶ国全ての国が連邦国家に参加した数日後、各国の外交官を前にして、ジバは改めて連邦国家の役割について説明した。


これまでには無い考え方に戸惑う外交官達から投げ掛けられる質問に、ジバは丁寧に対応していく。


それは3時間にも及んだ。


そして全ての質問が出揃ったところで、ギランシア帝国から外交官として参加しているソフィア姫が、質問してきた。


全ての外交官達が前のめりになっている。


誰もが聞きたくて、遠慮していたのだろうと、ジバは苦笑する。


「ええ、そうですね。


たしかに連邦国家という言葉はあちらで学びました。


そして、その連邦国家が崩壊する場面も見ています。


その他にも合衆国という考え方。限り無く強い自治権を持った小国を集めて、それら小国から選出された代表が全体の方向性を決める体制という感じでしょうか。


その他様々な形態の国家体制があります。


もちろん王制の国もありました。


それらは長所と短所があります。


それと権限を持った上位者の考え方により、同じ体制でも全く性格が変わってしまうのも事実です。


わたしの提唱する連邦国家は、様々な体制の盛衰を見てきた上で、考えうる理想のようなものだとお考え下さい。


民が安寧でき、邪神の復活を阻止するために何が正解か…それを皆さんと考えながらしっかりと作っていきたいと思っています」


「「「おおっーーー」」」


「ありがとうございます。


ジバ様、今日の連邦国家に対する考え方は素晴らしい理想ですわ。


そして、それは理想で終わらせないことが我々に科せられた使命なのでしょうね。


国家運営は大変なことだと父王が常々言っておりますわ。


恥ずかしながら、理想の国家体制などというものは絵空事だと思っておりましたのも事実ですわ。


でも…皆様!様々な国家の在り方についてもっと議論を交わすべきだと思うのですわ。


ジバ様は指針を与えて下さいましたわ。


そして幸いなことに、多くのケースについてその興亡をご存知なのですよ。


この会議の冒頭に邪神の復活という、未曾有の災害について、改めてジバ様からお話しがありましたわ。


ここにいる皆様は国家を代表して、この世界の滅亡を防ぐ使命を帯びておられるのですわ。


よく学び、よく議論を交わして、この世界をより良くしていきませんこと」


「「「わーーー、わーーー


その通りだーー!やろう、皆んなで邪神の復活を阻止するぞーー!


民を幸せにするぞーー!

」」」


沸き返る外交官を見渡して満足そうにした後、俺の方に振り返りペロッと舌を出して微笑むソフィア。


こりゃ美味しいところを持っていかれたな。


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