第34話

サーダン国が連邦国家に参加し、国の立て直しにジバの知識が活用されたという情報は瞬く間に世界中に伝わった。


それだけ、アウストラ王国の動向、いやジバの一挙一動は注目を集めているのだ。


そして、海の無いサーダン国が新たな特産物として輸出を始めた塩に世界中が驚愕した。


「これがアウストラ王国ジバ王子が授けられた神の知恵というやつか」


「海が無いのに貴重な塩を作り出すとは…」


「神の知恵を授けられたという話しは本当だったのだな」


「そうなると、古竜を単独で退治したと言う話も…」


「ああ、その話しは、あの国に入っている諜報員からも聞いてる。


どうやら本当みたいだぞ。


ジバ王子と討伐に参加していた騎士に直接聞いたと言っていた。


その騎士はジバ王子が使ったという2本の武器と古竜の牙を持ち帰ったそうだ。


その時の話しを詳細に聞いたそうだが、『ありゃ想像じゃ話せないぞ』って言ってたよ。


特に2つの武器はこの世界には無いはずなのに、細かなところまで、事細かに説明してくれたようだな」


「それなら確かかも知れんな。


ところで我が国の王は、どう決断されるのだろうか?」


「王としては連邦国家への参加を希望されているらしい。


だが、アウストラ王国も一枚岩では無いだろう。


ほら、現王の叔母であるサリア様が嫁がれたジャメール公爵家から参加を拒否するように要請が来ているようだよ。


サリア様の意思が働いているとして、王が要請を無視できるかどうかだな」





「サリア伯母からの要請か……


いつまで経っても苦手なんだよなぁ。


子供の頃のトラウマってやつだな。


サリア叔母だけならいいんだが、あの人の派閥が厄介なんだよ。


元教え子達なんだけど、洗脳されてるみたいに忠誠心が半端ないんだよな」


そうなのである。


叔母のサリアは、国立魔法学園の創始者であり、優秀な教師でもあったのだ。


我が王家に受け継がれている豊富な魔力と全能な魔力特性を持って、若干12歳にて教鞭を執った彼女は、そのカリスマ性を遺憾なく発揮し、国内に数多くの信奉者を作り出した。


その信奉者達が、彼女がアウストラ王国に嫁いでから既に40年の時が経つにも関わらず、国内の中枢にサリア派閥を形成しているのだ。


「サリア叔母が反対してるんだったら、アイツ等は無条件に反対派にまわるだろうな。


もし俺が強行でもしようものなら、クーデターでも起こしかねんぞ。


だが、今この国に連邦国家への参加が急務だ。


今ここで選択を誤ると大変なことになるぞ」


「陛下、この際サリア様派を一気に叩いておくのは如何でしょうか?」


「サリュー、それが出来るならやってる。


何か良い手でもあるのかね」


「アウストラ王国のジバ王子に相談してみましょう。


連邦国家の詳細を確認に行くとでも言って使者を出すのです。」


「しかし、叔母派が黙っているとは思えないが。


かなり危険を伴うことになるぞ」


「わたしが参ります」


「サリュー、危険だ。


国境までにも叔母派の貴族はたくさんいるぞ。


暗殺の恐れもある。」


「ですが、この機会を逃すと、我が国はいつまでも現状を打破出来ません。


必ずや、成功させてみせます」


「分かった。必ず帰って来るのだぞ」


「はっ!」


学生時代からの親友であり、様々な政敵を持つ国王にとって、気のおけないサリューの存在は何者にも代え難いものである。


だが、サリューの決意を瞳の中に感じ取った彼は、サリューが無事に戻って来ることをただひたすら祈るのみであった。

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