連邦国家への道

第28話

ジバ19歳の成人の儀開催はエイルザイム全土の国々に通達された。


各国の王族をはじめ首脳陣は、アウストラ王国に忍び込ませた間者を通じて、ジバが起こしてきた数々の奇跡を知っていた。


その内半数は王国の復活を歓迎し、積極的に王国との親交を深めようと考えている。


もちろん、王国に繁栄を齎したジバの功績を学び、自国の繁栄に繋げようと考える打算があるのも確かだが、為政者としてそれは仕方の無いことである。


特に黒サンゴの取引で他国よりも優位に立ちたい思いは強く、ジバとの政略的婚姻を考えている国も多かった。


一方、復活を歓迎しない国々もある。


特に黒サンゴや麦の輸出を主力産業としていた国々は、アウストラ王国が輸出する安価で高品質な黒サンゴや米に危機感を募らせている。


また、スタンピードによる国力の疲弊を好機と捉え侵略を考えていた国々も、次第に国力を増し、スタンピード以前よりも強固に成りつつある王国に危機感を持ち始めていた。


だが、歓迎しないとはいえ、全世界の国々が集まる大イベントに参加しないわけにはいかないのも事実である。


自分達がいない中で連合でも組まれてしまえば、たちまち経済的、武力的に餌食になってしまうことも十分あり得る話しなのだから。







「ジバ様、こちらアズバン王国よりの使者として参られた第1王子のラファエル様です。」


「初めましてジバ殿、貴公のお噂はスミセス殿からかねがね聞いておりますよ。


神より啓示を受け、卓越したアイデアを用いて疲弊した国の立て直しを計っておられるとか。


実際、友好国として一番近くでアウストラ王国を支援してきた我が国としても、このところの驚異的な発展には驚くばかりでしたがね。はははは」


「ラファエル王子、本日は遠路有り難うございます。


父王やスミセスから貴国の援助については聞き及んでおります。


遅ればせながら、本日わたしも成人の儀を迎えることが出来ました。


本日はささやかながらの宴となりますが、楽しんで頂けましたら幸いです。」


本来、王族の成人の儀は15になった年に行うのが慣例ではあるのだが、ジバはそれを今日まで延ばすように進言していたのである。


当時から神の遣いとして知れ渡っていたジバが、政治の表舞台に立つには、アウストラ王国の国力を鑑みた場合、時期尚早だと判断した為であった。


だが、国力の回復した今、ジバが全面に出ることが、連邦国家として優位に立つために必要なことだと判断した訳である。


友好国とは言え、ジバの力を量りかねているラファエル王子がジバに推し量るような視線を向けているのは仕方のないことではあるし、それはジバも十分に理解している。


父王や兄達はそれぞれ他国の代表と思い思いに歓談しているのだが、その話題の多くはジバが起こした奇跡と、ジバ本人のことに相違ないし、そのための口裏合わせについては十分に擦り合わせ出来ていた。


神からお告げがあったこと、ジバが授かった知識により国力が回復したこと、連邦国家構想とジバの知識を広く広める準備があること。


この3点を触れ回るのが今回の目的である。


最大の懸念である邪神の復活については、まだ公表しないことにしてある。


不要な混乱を招くことを恐れた為である。


「ジバ、ちょっといいかい?」


ジバがひとりになったかと思うと、父王や兄達が次々と他国の使者を紹介に来る。


ジバは当たり障りの無い挨拶を繰り返しながら、淡々と熟していくばかりなのである。


今、兄のキャスバルが連れてきたのは、彼の妃フランソワの出身国であるギランシア帝国の皇帝カイルと妹姫であるソフィアであった。


「ジバ殿、フランソワから便りで貴殿の活躍は聞いておるぞ。


伯父としては嬉しいかぎりだ。


以前教えてもらった米は我が国でも潤沢に食糧備蓄が実現出来たよ。


経済もデフレ気味になり、初めは喜んでいた経済大臣も、今では頭を痛ませているようだ。


まぁ、今のところ嬉しい悲鳴でしか無いのだがな。


ただ、さすがジバ殿。


米の生産量の多くを国有化した辺りは、将来的なデフレを予想していたということなのかな。」


「ええ、ただあの頃は食糧事情を改善することが急務だったので。


本来なら完全専売品としたかったのですが、主食として拡めることが必要でもありましたから。」


「そうだったな。確かに米を教えてもらう時に、その話しは聞いたな。


国としては専売品とするべきだったのかも知れないが、経済界に押し切られた感じが強いな。」


「お父様、そろそろ、わたしの紹介もして頂けませんか?」


「おお、すまないな。


ジバ殿、うちの末娘ソフィアだ。


今年15になったところでな、今日が初めての外交となる。


仲よくしてやって欲しい。」


これが俺とソフィアの最初の出会いであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る